専門学校九州デザイナー学院
トヨタカローラ福岡株式会社
大国段ボール工業株式会社
産学協同プロジェクトで商空間をプロデュース
学生による店舗プロデュースに活用されたVectorworks
博多駅前に位置する専門学校九州デザイナー学院 インテリアデザイン学科では、リアルスケールで学ぶ実践型授業の一環として7年ほど前から産学協同プロジェクトへの積極的な取り組みをはじめた。本企画がこれまで継続された背景には「学生たちへ社会人として旅立つ前に、この体験を通じて実社会の厳しさ、そして学びや気づきによる経験を積ませたい」という大人たちの熱い想いが募り実現してきた。
今回のステージとなったのは、トヨタカローラ福岡 井尻店のショールームを空間プロデュースするプロジェクトだ。プロジェクトに取り組んだ学生たちは、実社会の厳しさからの学び、アイディアの産みの苦しみ、ものづくりの難しさなど、いくつもの課題を乗り越え素晴らしい作品を完成させた。

学生たちが提案したアイディアには、来店されるお客様に配慮した動線計画やレイアウトへの工夫が施され、店舗の雰囲気にマッチした斬新な装飾デザインは、店舗が抱えていたSolutionにもつながり、また、商談のきっかけとなる話題性の向上にも大きく貢献した。本プロジェクトは約半年間に渡り活動され、産・学の双方で良質なシナジー効果を生み出し成功裏に終わった。
本事例では、発起人である九州デザイナー学院インテリアデザイン学科 平川 俊介 先生をはじめ、参加された学生、そして協力企業として参加されたトヨタカローラ福岡 営業支援部 グループ長 西村 努 氏、大国段ボール工業 代表取締役社長 寺澤 一光 氏へ話を伺った。
ことのはじまり
平川 氏:遡ること8年程前ですが、私は教育のことについてこれから先の方向性を悩んでいました。その悩みはVectorworks教育シンポジウムへ参加されていた大学の先生からのアドバイスにより前へ進むことができました。それが今回の学生が商空間プロデュースを行うというプロジェクトに繋がりました。
今では、学生が1年次より地域貢献プロジェクトの一環で行なっているショーウィンドウディスプレイのデザインや、2年次には店舗ショールームのプロデュースが行えるまでと成長しました。

西村 氏:時を同じにして、私たちも地域に根ざした貢献活動を行う計画を検討していたところ、平川先生から熱いオファーをいただき、県内にある32拠点のショールームを対象にお客様が安心して、喜んでいただける商空間づくりをテーマに学生さんへデザインをお願いすることに決定いたしました。
寺澤 氏:私は、生業としている段ボールの可能性を伝える為、マスメディアへの出演をしたことがあります。この出演をきっかけにさまざまな分野から連絡をいただくようになりました。4年ほど前になりますが、このテレビの放映をご覧になられた平川先生のご指導のもと、学生さんから企画協力の連絡をもらったのが今回のきっかけとなりました。

本格的なレーザーカッターの加工も学生たちだけで操作
プロジェクトにかける想いとは
平川 氏:計画を遂行する為には、外部交渉はもちろん、素材選びや予算の策定にも大変悩みましたが、体力的にも大変でした。それでも私を突き動かす原動力には「生徒のことが好き」という強い気持ちがあります。そこにはデザイナーになっても作り手のことを考えられる人材になってほしいという思いがあり、この子達が社会人になる前に、ものづくりの大変さ、デザインの難しさ、そして達成感を培って欲しいと考えています。

1つ1つを手作業でボンドだけを使い施工していきます
西村 氏:ショールームは弊社にとって大切な商空間です。来店されるお客様を暖かく迎え入れ、小さなお子様がいても安心して商談に集中できるなど、クオリティもさることながら空間への配慮も求められます。また、若年層の目線で、斬新で驚きのあるアイデアと、入りやすい店舗の雰囲気づくりにつながる、まとまりあるデザインにも期待をしています。既に実施された店舗からはお客様の評判も良く、「子供を安心して連れて行ける」「この遊具は購入できるの?」などの感想をいただいており、今後も可能なかぎり継続してゆきたいと考えています。
寺澤 氏:私の持つ知識は全て提供する心構えで協力をしています。段ボールを使った作品の安全面、強度なども工夫されていて年を重ねるごとに作品の出来栄えが良くなってきている。学生にはよく見てよく考え使う人を研究してほしい。相手に喜んでもらえることを大事にして、クオリティの高いデザインを追求できる社会人になって欲しいと思います。

プロデュースされた学生の感想
重田 真優 さん:お客様に自分たちが作った作品。相手が見えない作品。実際にお客様が使うことを考えなければならないことが多くありました。社会に出たらそれが当たり前。企業のみなさんにアドバイスをいただくことで、学生の内に社会に出た先の自分を想像することができるようになり、成長を実感しました。
主計 真歩 さん:デザインを検討し始めのころは、一般で売られているものしか見たことがなく、その固定概念に囚われていましたが、先生のアドバイスによりオリジナリティのあるデザインを考えることができ、面白いものが作れたと達成感を得ることができました。

機能面にも優れており上面が開閉できるので補充管理にも便利
大松 史果 さん:自分が提案したものを実際に形にすることがなかったので、提案した実物が目に見えてわかったことに感動しました。家具1つ作るのにも大変な作業があることがわかり、これから就職して社会人になったとき、絶対活かせると感じました。
尾路 拓海 さん:企業とコラボして大掛かりな作品をみんなと作れた経験は初めてでしたが、これは社会に出て活かせる経験でした。そしてすごい達成感がありました。単純に完成できて嬉しいです。

【取材協力】
- 学校法人Adachi学園 専門学校九州デザイナー学院 インテリアデザイン学科
- 平川 俊介 先生
- 重田 真優 さん
- 主計 真歩 さん
- 大松 史果 さん
- 尾路 拓海 さん
- トヨタカローラ福岡株式会社
- 営業支援部 グループ長 西村 努 氏
- 大国段ボール工業株式会社
- 代表取締役社長 寺澤 一光 氏
- 記載されている会社名及び名称、商品名などは該当する各社の商標または登録商標です。記事中の人物の所属、肩書き等は取材当時のものです。製品の仕様、サービス内容等は予告なく変更することがあります。