ユーザー事例

バウンダリーデザイン一級建築士事務所
井上 浩平

一般財団法人経済調査会「建設ITガイド2021」掲載

ユーザー事例

バウンダリーデザイン一級建築士事務所
井上 浩平

バウンダリーデザイン一級建築士事務所は、福岡でリノベーション・クリニック・住宅を主軸に活動している設計事務所。Vectorworks Architect導入後も、なかなかBIMに移行できずにいたが、「VECTORWORKS ARCHITECTで学ぶ住宅設計のためのBIM入門」の書籍を頼りにBIMに取り組み、歯科医院のインテリアデザインを手掛けて以来、VectorworksによるBIM設計を導入している。

個人事務所のBIMのバディ

Vectorworksとの邂逅

それは学生時代、少しずつ簡単な使い方から始まった。Illustratorで地図をトレースし、DXFでVectorworksに持っていき、街を3Dにするなど、コンペに使う素材などを作成していた。

社会に出て、店舗設計を中心とした事務所では2D図面を作成したりもした。主に保育園・幼稚園を設計する事務所で、本格的に使い始め、実施設計まで行うようになった。その事務所自体が、Vectorworksのさまざまな設定をしたファイルを使うようになっていて、クラスやレイヤの利用方法もそこで身につけた。クラスやレイヤのグレイ表示を活用し、情報をちゃんと分けていた。クラスに線の太さや色を定義することで、後の変更にも一元管理ができるようになる。

この利用方法は現在の使い方の基礎にもなっている。Vectorworksを使い始めた時に、こういった設定を身につけられたので、BIMに移行する時のハードルは一つ少なかったと言っても過言ではない。BIMを実施する際はクラス分けが非常に重要になるため、クラスに対する免疫をすでに持っていた。

独立、そしてVectorworksユーザーへ

2015年にその事務所を退所し、独立することになる。ただ、独立直後はVectorworks Fundamentalsを買わざるを得なかった。当時は2次元図面をVectorworksで、プレゼン用の3DパースをShadeで仕上げていた。約2年半ほどFundamentalsで設計業務を行い、個人住宅からクリニックを中心に企画も含めて40件ほどになった。構造は木造がほとんどだった。

しかしながら、その頃からもどかしさはあった。施主との打ち合わせ後、デザイン変更をする時には、Vectorworksで2次元図面を、Shadeでパースの手直しをしなければいけないからだった。そういったこともあり、BIMに関心を持った。BIMにすることで3Dモデルから図面を取り出せるため、今の自分がなんて無駄な作業をしているのかと感じていた。BIMソフトは高価だという印象があったが、VectorworksをArchitectにグレードアップすることでBIMが可能だと知り、BIMの導入に至った。

BIMの入口へ

でも、Architect導入後、丸1年ほど2Dのままだった。なかなかBIMに移行できずにいたところ、「VECTORWORKS ARCHITECTで学ぶ 住宅設計のためのBIM入門」が出版された。この書籍を頼りに、まずは1軒 BIMでやってみようと思い立った。

2019年、BIM処女作は歯科医院のインテリアデザインだった。当時、Vectorworks Architectが 持っているBIM機能を使いこなせておらず、使ったBIMツールは壁とスラブくらいだった。いま見返してみると「よくこれで仕上げたな」というレベルのものだ。インテリアだったから収まったのかもしれない。家具は柱状体などの汎用モデリングを活用した。

もっと使いこなしたいという思いに駆られ、40坪弱の歯科クリニック新築プロジェクトで本格的に取り組んだ。このプロジェクトは、BIMで新築に取り組んだ初めてのものであったが、実施設計までをBIMで行った。1軒でもBIMで取り組むと、提案の仕方が変わることがよく分かった。

BIMで変わる提案方法

最近、インターネットのコンペサイトで、夫婦2人のガレージハウスの募集案件があったのだが、2日かからずに提案まで持っていくことができた。現地が近かったので一度足を運んだくらいで、ほとんど写真と敷地図で企画に取りかかった。写真と敷地図だけで提案が出来上がってくる、そんな時代にクライアント側も驚いたと思う。

この提案は採用されたのだが、予算との兼ね合いで結局実現には至らなかった。Unbuiltになってしまったものの、自分の中ではカタチになったものだったため、事務所のWebサイトに作品としてアップした。

BIMを始めたことで、3Dモデルを活用しながらデザインの作成に時間を費やすことができるようになった。図面はビューポートとシートレイヤを利用し、デザイン修正があった場合は、図面を更新するだけで最新の状態になる。個人事務所のため、スタッフに図面修正をお願いできず、自分でやらなければいけない。BIMを活用することで、Vectorworksが事務所スタッフのような役回りをしてくれるため、とても業務効率が向上している。また、VectorworksとTwinmotionを合わせて活用しているため、急ぎのビジュアライズはTwinmotionで、しっかりとしたパースはRenderworksで、といった役割分担を決めている。

BIMへのハードル

3Dモデル作成と、3Dモデルからの図面作成は意外とすんなり移行できたと感じている。クラスに慣れていたこともあり、オブジェクトの分類は受け入れやすかった。2019から搭載されたデータタグもそれなりに活用できている。ただ、今でも活用できていないことは「ワークシート」だ。あとはオブジェクトの情報に応じて色分けなどを行える「データの可視化」である。ワークシートの活用はぜひ取り組みたい機能だ。

まずはワークシートに慣れようと思い、現在のところ「設計概要書」や「各室面積表」をワークシートで作成している。Excelのようなスプレッドシートとして利用しているため、今後はオブジェクトの情報と紐づけられるワークシートのデータベース機能を活用したい。あとは、自分が慣れていない点もあるが、スペースの2D表現を自分らしくカスタマイズできるようになりたい。

今後の展望

個人事務所の規模でも、BIMの活用が大きな役割を果たすと考えている。図面の整合性を取りながら、自身は空間デザインに注力できる。VectorworksをBIMのバディとしてさらに活用していきたい。

井上 浩平

バウンダリーデザイン一級建築士事務所

  • 所在地:福岡県福岡市
  • 設立:2015年
  • 事業内容:建築設計監理、建物調査、企画提案、インテリアデザイン、監修
  • この事例は一般財団法人経済調査会の許可により 「建設ITガイド2021」で掲載された記事をもとに編集したものです。記事中の人物の所属、肩書き等は取材当時のものです。
  • 記載されている会社名及び商品名などは該当する各社の商標または登録商標です。 製品の仕様、サービス内容等は予告なく変更することがあります。

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