ユーザ事例 & スペシャルレポート

株式会社 三和製作所は「ひとの健康と安全を守る」をコンセプトに、医療機器、介護用品、防犯防災用品などさまざまな商品を取り扱っています。中でも学校に関わる商品は多岐にわたり、学校ごとの細かな要望にも対応する商品づくりを行っています。これまで商品開発には主に3DCADソフトウエア SOLIDWORKSが活用されていましたが、新たにVectorworksも活用することで、より良い商品の開発と伝わりやすい表現で提案することを目指しています。実務の中でVectorworksがどのように活用されているのかをご紹介します。
今回、商品の企画から開発、特注品の設計からレイアウト提案まで行う開発部の山木 綾子(やまき あやこ)さん、栗林 徹(くりばやし とおる)さんにお話をうかがいました。
山木:三和製作所では主に学校向けの商品を多く取り扱っています。それらの商品は学校向けに展開しているさまざまなカタログの中で紹介していますが、カタログ掲載商品の1割程度が自社開発商品です。開発部ではその自社開発商品の設計を担当しています。さらに、カタログに掲載のない商品、例えば、学校の薬品棚やトロフィーを飾るショーケースなど特注品の設計も行っています。これまで、製品の設計は企画開発部に設計担当が一人いるだけでしたが、もっと多くの商品を取り扱いながら新しい展開もしていこうということで、昨年の11月に設計担当を増員し、企画開発部から独立した設計担当部門として開発部が新設されました。
山木:製品の設計ではSOLIDWORKSを使っていますが、新しく保健室に備品一式を納入するという仕事で、納入商品の図面だけでなく、商品をレイアウトした平面図で寸法も確認したいという要望がありました。この案件は、Vectorworks導入前に受注したものだったので、とても大変だったのですが、なんとかSOLIDWORKSを使ってレイアウトイメージをパースのように見せてプレゼンテーションをしました。それが、Vectorworks導入のきっかけになりました。以前はこういった仕事はほとんどなかったのですが、最近は徐々に増えてきています。
山木:Vectorworks導入前に保健室のような案件は数件ありました。実際、SOLIDWORKSで作成したレイアウトイメージでも保健室の先生の反応は非常に良かったようですが、一番悩んでいたのはSOLIDWORKSでレイアウト図面が描けないことです。さらに、天井高もわからない状態で進めていましたので、保健室の案件では現場に納入する際、家具がカーテンレールに当たってしまうということがありました。ですから、こちらとしては平面図やパースなど建築的な図面も作成してサポートしていくことで、仕事が進めやすくなるだろうと考えて、建築やインテリアにも使えて操作しやすいCADソフトを探し始めました。その中で、SOLIDWORKSとの互換性も非常に良いということでVectorworksの導入を決めました。
山木:Vectorworksはまだ使い始めたばかりですが、壁、床、窓、ドアの3Dツールを使えば簡単に部屋もつくれます。さらに、SOLIDWORKSで作成した製品モデルをParasolidX_TでVectorworksに問題なく取り込めるので、作成した部屋に製品モデルを配置するのはとても簡単でした。そして、室内はレンダーカメラツールでアングルを設定してレンダリングができるのでとても便利です。すべて3Dで作成し、ビューポート機能で平面図やパースも簡単にシートレイヤに作成できるので、プレゼンテーションには最適です。
栗林:やりたいことを表現するには、もう少し使いこなす必要がありますが、SOLIDWORKSで作成した製品モデルは、取り込んだVectorworks上で色やテクスチャを簡単に変えられるのでとても便利です。イメージの違うパターンも簡単に作成できるので提案の幅が広がります。
山木:ほとんどの仕事は数社の提案の中から1社が選ばれますが、今までは納入商品単体の図面や写真、価格を一覧表にして提出するのが一般的でした。この保健室の場合も、イメージパースでプレゼンテーションしたのは三和製作所だけだったそうです。商品を単体で見せるのではなく、レイアウトしたパースなどの図面でプレゼンテーションすることで、お客様は完成イメージを持ちやすくなりますから、こういった対応は今後も必要になってくると思います。
栗林:今後は、どんな商品でも置かれる場所にレイアウトして見せるというサービスが必要になってくると思います。色やテクスチャなども何パターンも提示してお客様が選択しやすいような提案をしていくことで、こちらとしてはデータも蓄積されますから、提案の幅も広げられるのではないかと考えています。
山木:営業からはプレゼンテーション用の資料が欲しいという要望があります。また、小ロットの特注品の要望も多くあります。中でも、最近すごく多くなっているのは「AED収納ボックス」です。例えば、ホテルに設置する場合、ホテルの内装や壁紙に合わせて欲しいという要望があります。今までは、ホテルの内装写真を撮影し、その写真に商品を合成して色の提案をしていましたが、そういった場合もVectorworksであれば、3Dでよりリアルな表現で提案することができると思います。
栗林:要望の多い特注品がオリジナル商品になるケースもあります。例えば、いざという時のために非常用トイレや水、食料などコンパクトにエレベーター内に収納できる「エレベーター非常用収納BOX」はその一つです。
山木:想定した空間やシーンに合わせた商品のレイアウト図面がVectorworksで作成できますので、そこからいろいろな展開をしたいと考えています。例えば、2年に1回改定しているスクイル(SQUIL)というカタログは、新しいものが今年の7月に発刊予定です。今回の改定ではVectorworksを活用して、商品をシーンで見せるということに挑戦してみたいと考えています。今までは商品単体を掲載していましたが、レイアウトイメージなどの図面やパースも載せることで商品が置かれるシーンがイメージしやすいカタログにできたらと考えています。
山木:部屋をまるごとプロデュースするような仕事に取り組んでみたいです。保健室であれば全体の提案に合わせて、作り付けの家具なども設計できたらと思います。また、学校用品は教材も扱うようになったので、保健室に限らず理科室や他の教室などもレイアウト提案してみたいです。そして、今まで製品はすべてSOLIDWORKSで作成していましたが、木製の棚をつくるときには製品設計にもVectorworksを使ってみたいと思っています。
栗林:伝わりやすい表現という意味ではVectorworksで、空間をよりリアルに表現していきたいです。そのためのテクニックを身に付けたいと思いますし、Vectorworksにはさまざまな機能がありますので、例えばワークシートなども使いこなせるようになりたいと思っています。
株式会社 三和製作所
代表取締役
小林 広樹 氏
メーカーは、単に「もの」を作って売るのではなく、お客様に「もの」が置かれる空間や環境、シーンをイメージしてもらうことがますます重要になってきています。例えば、学校の保健室であれば、商品が配置されるとどのような空間になるのか、商品単体の図面だけでなく平面図やパースなどで空間全体をビジュアル表現していくことが大切です。そして、カタログの中でも3Dでそれぞれのシーンイメージが表現できれば、お客様に対して今まで以上にアグレッシブなアプローチができるのではないかと考えています。空間やシーンをイメージさせる表現という意味で、Vectorworksには大いに期待しています。
ー取材を終えてー
Vectorworksの本格的な活用については、まだまだこれからというお話でしたが、Vectorworksを導入し、仕事で悩んでいた部分は解消されそうだということで安心しました。SOLIDWORKS、Vectorworks共にそれぞれの良さを最大限生かしつつ連係させることで、より良い商品の開発と夢のある空間の提案につなげていただけたらと思います。
エーアンドエー株式会社 カスタマー・リレ−ション課 竹内 真紀子
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