ユーザ事例 & スペシャルレポート

2015年4月23日に、「第3回 A&Aイノベーション・セミナー」が開催されました。A&Aイノベーションセミナーとは、A&Aが開発に寄与した製品や、それをもとに創造された新たな技術や最新の取り組みを紹介する試みとして、2012年から開催を始めたセミナーです。

今回は、『「熱と風」でクールスポットを探せ!』と題し、「ThermoRender 5 Pro」と、流体解析ソフト「STREAM」との連成事例を中心としてセミナー内容が構成されました。「ThermoRender 5 Pro」にて、汎用流体シミュレーションソフト「STREAM」との連成機能が搭載され、一様場の風向、都市街区にて変化しない風速を余条件とする「ThermoRender 5 Pro」にて、気流の影響を考慮した出力結果を得ることができるようになったことが、今回のセミナー開催の経緯となりました。


ThermoRenderとSTREAMとの連成計算

ThermoRenderは、建物モデルの作成や、建物材料の物性値の設定などをすべてVectorworks上にて行います。建物モデルのメッシュ化や計算は外部プログラムが起動しますが、そのインターフェースもVectorworksとなります。

一方、「STREAM」では、”Pre”と呼ばれる形状製作・パラメーター設定段階と、”Solver”と呼ばれる計算エンジン、”Post”と呼ばれる結果出力が用意されておりますが、連成計算をする際は、「ThermoRender 5 Pro」から出力された専用データをSTREAMの”Solver”にドラッグ&ドロップするだけで計算が終了します。

連成計算の結果では、今まで見えなかった「冷気溜り(クールスポット)」や「風速を加味した表面温度分布」を確認することができるようになりました。

「風と熱」のシミュレーションにより期待されるシナジー効果

東京工業大学 浅輪准教授からは、『「風と熱」のシミュレーションにより期待されるシナジー効果』と題して、都市におけるパッシブ手法の適用とその効果における、熱と風の重要性について講演がなされました。イソップ物語の「北風と太陽」の寓話に着想を得て、「この物語は、都市環境をよく表している」との導入から展開される話は、ともするとアカデミックになりがちなこの手の話を、とてもわかりやすい表現で説明されておりました。

「クールスポット」は、気温よりも低い場所が作り出す局所的な気候になりますが、このような場所が都市部には少ならからずあり、これをどのように生かしていくかという方向性が示された講演でした。

また、砺波平野における調査では、大規模なシミュレーションを行い、水田を渡る風が冷気流となることが確認されました。稲作における潅水期と、暑くなる季節とのマッチングが導き出した大規模な冷却システムのようでした。

ThermoRenderとSTREAMを用いた計画事例

株式会社日建設計の永瀬氏からは、「ThermoRenderとSTREAMを用いた計画事例」として、日建設計が手がけた最近の事例が紹介されました。

講演では、ThermoRenderをいち早く導入した同社での、STREAMと組み合わせたシミュレーションの展開、省CO2、ヒートアイランド対策を考慮した街区開発の報告、大崎西口における「NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)」の事例報告がなされました。

最近の同社報告では、NBF大崎ビルのコンセプト、設計の経緯が語られることが多く、それをよく耳にする機会はありましたが、環境シミュレーションの視点から解説された本講演は、非常に興味深く、同社のコンサルテーション手法の一端を垣間見ることができました。

猫はクールスポットを探すのが上手などと言われますが、私たちの身近なところにもクールスポットがあり、夏冬関係なくそれを感じています。都市部において、緑化された美しい公園や水辺は、クールスポットの代表的な場所と言われておりますが、ビルの谷間や高架下、高層ビルの影になる部分など意外なところにクールスポットが隠れていることに気がついたセミナーでした。

エーアンドエー株式会社 ソリューション販売推進課 竹口太郎

(取材:2015年4月)

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