ユーザ事例 & スペシャルレポート

宮城県では、教育界と産業界が連携したものづくり人材育成プログラム『みやぎクラフトマン21』に取り組んでいます。その一環として、宮城県工業高等学校 インテリア科において、インテリア実習の講師を、弊社、販売推進部 セミナー担当が務めました。宮城県工業高等学校のインテリア科は学校創立時には漆工科として設置され、その後、木材工芸科、工芸科と改称し、昭和48年(1973年)にインテリア科(男女共学)となった、創立以来100年の伝統を引き継ぐ学科です。

今回、インテリア実習「Vectorworks演習」でどのような授業が行われたのかご紹介します。


-1、2時限目 インテリア実習 「Vectorworks演習」-

授業は、インテリア科 科長の挨拶で始まりました。その後、簡単にVectorworksが活用されている分野や特徴を紹介して演習に入りました。今回の「Vectorworks演習」は、建築や内装、インテリア業界向けのVectorworks ArchitectとRenderworksの機能を活用して2時限 約90分で簡単な部屋の間取りから、3DCG(内観パース)を仕上げることが目標です。完成イメージとさまざまなCG紹介では、リアルなCG表現に教室内が少しざわつきました。

-柱・壁の作成 -

まずは、用意されたファイルを使って柱と壁の作成です。四角形ツールから柱を、壁ツールで壁を、簡単な手順で3Dにしていきます。一通りの操作説明後、セミナー担当の講師とインテリア科の久保先生も学生の進捗度合いを確認に回りましたが、ミラー反転やフライオーバーツールなど、すでに操作を学んで慣れていることもあって、作業はスムーズに進みました。

-建具・床の作成 -

次は、壁に囲まれた部屋にドアと窓の作図です。建物ツールセットのドアツールで両開きのドアを、窓ツールでFIXと引違いの窓も設定します。ドアは3Dで開く表示と閉じる表示ができるため、楽しかったのか開けたり閉めたり3Dで何度も確認する学生もいました。建具の次は四角形で床を作図して、建築・土木メニューで床の設定をすることで、3Dの部屋が完成しました。

-テクスチャの割り当て -

1時限目では、作成した3Dモデルにテクスチャの割り当てまで行いました。リソースブラウザからアプリケーションにあるライブラリの内部仕上げテクスチャを選択し、3Dアングルのモデルに、各自テクスチャを割り当てます。今回はナビゲーションパレットの登録画面から簡単に家具が配置される仕掛けをしていたので、ダブルクリックで家具が配置された瞬間は一様にびっくりしていましたが、思い思いのテクスチャを選んで個性的な部屋に仕上がっていきました。

-シェルチェアの作成 -

2時限目は、1時限目の作業を一旦終了し、椅子の作成に挑戦しました。こちらも、あらかじめ用意された作図に必要な曲線3本と椅子の脚のパーツをもとに、シェルチェアを作成しました。ここでは、曲線をNURBSに変換し、3Dツールセットパレットの多段曲面ツールで座面を、椅子の脚は3Dパス図形で作成しました。作成後、属性パレットで椅子の座面に各自好きな色をつけて、OpenGLレンダリングをして椅子の完成です。

-内観パースの仕上げ -

椅子の作成も順調に終了し、1時限目に作成した内観パースに戻って最終的な仕上げです。天井とカメラアングルはあらかじめ用意されたものを使いましたが、ビジュアライズツールパレットの光源ツールで、平行光源と点光源の設定を体験しました。背景放射光の設定など、ちょっとしたこつも伝授してもらった後、仕上げレンダリングで、リアルな内観パースがモニタに登場した瞬間は、感動して声を上げる学生も多く充実した2時限の実習は終了しました。

担当の久保 晴義(くぼ はるよし)先生にお話をうかがいました。

-インテリア科の製図とCADの授業はどのようなカリキュラムですか? -

1年次は、手描きで製図の基礎を学びます。2学期の10月からVectorworksの授業が始まり、簡単な2D平面と3Dのモデリングを少し学びます。2年次は手描き製図で、2階建て専用住宅の自由設計課題に取り組みます。それと平行してVectorworksの授業ではCG表現に取り組み、希望者は完成作品を全国高等学校インテリア科教育研究会のコンペ「高校生の部屋」に提出します。3年次には課題研究の授業で、6つの班に分かれて設計やデザイン、木工など一年を通してデザイン活動に取り組みます。また、3年生の前半に、Vectorworksを活用して商業施設の設計課題に取り組みます。その作品も希望者は2年次と同様にコンペに提出します。

-CADの指導で苦労することは? -

今年度の1年生はCADの飲み込みが非常に早く、授業も順調に進みました。年々早くなっているような気もします。課題も授業時間内にだいたい終わりますが、放課後CAD室を開放して自習できるようにしています。また、コンペ提出のために放課後遅くまで作業する学生もいます。ただ、手描きであれば下手でも表現できることが、CADの操作がわからずに表現するのに非常に時間がかかってしまう学生もいます。操作につまずくと、それ以上図面が描けないということがCADでは起きるので、そこは指導が難しいところです。CADが少し不得意な学生には、CADで作成した線画のパースを下絵として手で着彩させるといった使い方も教えています。

-今回の講師派遣依頼の経緯とねらいは? -

ものづくり人材育成プログラム『みやぎクラフトマン21』は、宮城県が専門高校の学生に対して予算をつけて始めた事業です。インテリア科で今年度は1年生が2回、2年生と3年生は1回ずつ合計4回行いました。模型作成やデザイン手法など企業の方や個人で活躍しているプロの方を呼んで講義をしてもらっています。Vectorworksに関しては、カスタマイズセミナーがあることは知っていましたし、担当教員もすべての操作と表現手法を把握しきれていない面もあるので、学生も教員もつまずく部分を教えていただきたいと思ってお願いしました。

-「Vectorworks演習」の感想は? -

Vectorworksは1年生の後期で1コマ50分、週3時間授業があります。今回はその授業が終わったばかりのタイミングでの演習です。1年生の授業では簡単な3Dモデルに色をつけて提出するところまで行っていますが、体験しているレンダリングは、OpenGLやソリットレンダリングだけです。2年生のVectorworksの授業でテクスチャの割り当てに入るので、1回か2回分の授業が先にできた感じです。さらに、今回の演習では光源の設定も体験できたので、VectorworksのCG表現に期待を持った学生もたくさんいるのではないかと思います。3年生のVectorworksの授業でも取り入れたいと感じましたし、非常に充実した演習でした。

-今後取り組みたいことは?-

Vectorworksについては、学生が自分のツールとしてさらに表現力を向上できるようにして行きたいと思います。また、操作につまずいてしまって、CADに手をつけられない学生も減ってくれればと思っています。CADができる学生を要望する企業も多くなっています。震災復興もあって、建築需要は今年度来年度がピークになってくると予想されます。難しい面もありますが、実施図面の描き方や読み方なども学ばせられる授業展開ができたらと思っています。例えば、矩計図などは、手描きだけでなくCADでも描けると学生は自信もつきますし、企業の希望にも合うのかなと感じます。実務で使えるCADの使い方もぜひ体験させたいと思っています。

ー 講師よりひとこと ー

今回開催したインテリア実習では、Architect with Renderworks でインテリアデザインに利用できるさまざまな機能をご紹介しました。半年間Vectorworksの授業を受けられた学生が対象でしたが、みなさん飲み込みが早く、かなりスムーズに進行できたことに驚きました。時間の都合で残念ながら質疑応答を設けられませんでしたが、CADの操作を楽しいと思っていただけて何よりです。今後もVectorworksを活用して、楽しくインテリアデザインを行っていただきたいと思います。

エーアンドエー株式会社 販売推進部 大嶋 悠子


ー取材を終えてー

教室の後ろで演習の様子を見学させていただきましたが、学生のみなさんの吸収の早さに驚かされました。そして、先生のお話から高校3年間で、CADを含めさまざまなソフトに触れながら専門知識を身につける、内容の濃いカリキュラムが組まれている印象を受けました。これからの2年間で、デザインのツールとなるVectorworksをさらに使いこなして、さまざまなことに挑戦して欲しいと思います。

エーアンドエー株式会社 CR推進課 竹内 真紀子

【取材協力】

宮城県工業高等学校 http://miyagi-th.myswan.ne.jp/

インテリア科 教諭 久保 晴義 氏

(取材:2014年3月月)

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