ユーザ事例 & スペシャルレポート

EVOLVE ”〜 進化 〜”をテーマに開催した「Vectorworks 2013新製品発表会 全国キャラバン」にて講演していただいた内容をご紹介します。


3Dで敷地から考える

私は、建物を建てる敷地が決まった段階で、直ぐにシミュレーションをはじめます。敷地に対して「建物のボリュームや配置はどうしたらよいか?」「近隣の建物の影の影響はどうか?」「風の流れはどうか?」「窓の配置はどうしたら良いか?」などです。設計の初期段階からVectorworksの3D機能を使い、これから建てようとする建物の検証をはじめます。

Vectorworksは、2D図形に柱状体などといった基本機能を使い奥行きを与えることで、簡単にモデリングすることができます。


Vectorworks2012 Architectシリーズ以降では、「太陽光設定ツール」といった機能が搭載され、日射しのアニメーションをリアルタイムにおこない確認することができます。これは本当に便利で助かる機能の一つです。先ず最初に簡単なモデリングをしてから、日射しシミュレーションをおこない、敷地と建物の関係性を把握していきます。

デジタルとアナログの融合

私は、Vectorworksで3Dを作り、それを元に図面化をしたり、パースにしたり、先に述べたシミュレーションをしたりと、デジタルデータの活用を積極的におこないながら、同時にアナログな一面も取り入れています。それは手作業でおこなう模型制作です。3Dモデルと模型を併用しながら、建物のデザイン検討や、光の入り方や風の流れなど、さまざまな可能性を探っていきます。

模型は、建物を敷地全体から俯瞰し検討することができますし、Vectorworksでは、細かな納まりの検討や、目に見えない風や光等を視覚化しながら設計作業を進められます。両方の作業をおこないながら、全体のスケールをおさえ納まりを考え、より良いベストなカタチを求めていきます。私にとってこの方法は、それぞれの良いところを活かしながら、修正点を早く見つけ出す最良の方法だと思っています。模型創りは、息抜きにもなりますし。(笑)

Vectorworksは「環境装置としての建築」「パッシブな建築」を探るツールにも

私の場合、先にも述べた通り、Vectorworksを使ってさまざまなシミュレーションをおこなっています。自然エネルギー(太陽光)を有効に使えるように、室内において夏は陽が入らないように、逆に、冬には陽が奥まで差し込むように、軒の出や窓の位置や大きさを日射しシミュレーションを使いながら検証していきます。季節ごとに光の入り方を検証・調整・評価できることは、私にとって重要で欠かすことができないツールの一つです。

日射しシミュレーションの面白い使い方としては、屋根面にソーラーパネルの設置を検討していた際に、周辺の山の影響で日射が確保されるかどうかの検証を行った事例もあります。このプロジェクトでは、冬至において屋根面が午後2時以降に西側にある山の陰になることがわかりました。その結果から、発電量が年間を通じて60%ほどしか確保できなかったため、ソーラーパネルの設置は見送ることとなりました。

さらに、私にとってもう一つ大切なシミュレーションがあります。それは、目に見えない「風」の通り方を見ることができるシミュレーションです。Vectorworksのプラグインである「Windworks」を使うことによって、建物モデルから取り出した平面や断面から、風の通り道を見ることができます。これによって、窓の大きさや場所、開閉によって風の流れ方を比較し検証することができます。Vectorworksは、3Dモデルを創り、そこから図面を生成したりパースにしたりするだけでなく、私にとって、その先にある「環境装置としての建築」や「パッシブな建築」を探るツールにもなっています。

私にとってのVectorworks

Vectorworksは、使えば使うほど奥が深いソフトウエアだと感じます。ときには、スケッチの道具であったり、図面を描くCADであったり、3Dを作成するプロダクトやBIMのツールであったり、積算するツールであったり、CGを作成するツールであったり、日射しや風通しをおこなうシミュレーションツールであったりと、使う人が使いたいように使える汎用ツールだと思います。

私の設計で、いつも考え取り組んでいる「たのしいけんちくを、もっと。」を支えるツールがVectorworksであり、そのデザインを可能にしてくれています。たのしい建築とは、つながりのある建築のこと。家族のつながり、人とまちのつながり、建築と自然のつながりなど。さまざまな「つながり」を、もう一度 Reデザインすることで、感動と楽しさのある心豊かな環境を提案したいと考えています。

私は、Vectorworksのほんの一部の機能しか使っていませんが、Vectorworksには私の知らない便利な機能や可能性がまだまだたくさんあります。私はこのVectorworksを使い、これからもたくさんの「つながり」をつくっていきたいと思います。「たのしいけんちくを、もっと。」

【講演者情報】

伊藤瑞貴建築設計事務所 http://miaaa.biz/

代表 伊藤 瑞貴 氏

Vectorworks2013新製品発表会 全国キャラバン福井(2013.1.25)

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