ユーザ事例 & スペシャルレポート

EVOLVE ”〜 進化 〜”をテーマに開催した「Vectorworks 2013新製品発表会 全国キャラバン」にて講演していただいた内容をご紹介します。


Vectorworks (MiniCAD)との出会い

大学時代から構造系でしたので、AppleⅡやコモドール、PC6001にてプログラミングを行っていました。その環境からPCは鉛筆と同列の文具の一部でしたので、事務所開設の数年後には国産機上で動く汎用CADを使用していました。

30歳の頃と記憶しておりますが、知人からMacの内覧会に招待され、そこで出会ったのがMiniCADバージョン3でした。丁度Classicが発売され劇的にMacの値段が下がった頃のことです。導入したころのファーストインプレッションは当時使用していた汎用と違い、コマンドの少なさにはびっくりしたことを鮮明に覚えています。

「これで本当に図面が描けるのか?」と正直思いましたが、一週間後には全て作業がMiniCADに移行していました。それまでのマシンはカラーのハイレゾで14インチの大画面でしたが、Macは白黒で9インチの小さな画面です。しっくりと自分の手に馴染むCADというような表面的なスペックで言い表せない何かがそこにはあったのです。

Vectorworksの強み

Vectorworks以外で私の事務所で所有するライセンスは、ArchiCAD、DraCAD、CRAFTCAD(2D設備設計ソフト)、parts(3D設備設計ソフト)、StageCAD、設計Vision、SketchUP、FormZ、Cinema4D、Artlantisなど、他にも数えきれないほど多くのソフトウエアを所有しています。(笑)これらと比較して、Vectorworksは一言で言えば、この1本で間に合うということです。それぞれのCADやCGソフトは、もちろん部分的に優れているところがあり使用していますが、2Dと3Dをシームレスに行き来でき、直感的に扱えるのがVectorworksなのです。特に2Dの操作性は抜群です。

様々なソフトを連携して使用するために、毎回データを書き出す方法と比べると、Vectorworks1本で設計する方が作業スピードが大きく違いますし、設計行程が進むにつれ影響が大きくなります。設計を進めると手戻りは必ず発生しますので、私の経験上、自己完結型(1つのソフトウエアで設計を行うこと)が最も望ましいと感じます。

痒いところに手が届く操作性

基本設計・初期プレゼン資料・CGから構造・設備設計図まで全てVectorworks上で作業しています。機械設備図に関しては施工図CADのデータをコンバートする時もありますが、主に鉄骨の構造図は全てVectorworksで作成します。

Vectorworksにおいて、クラスとレイヤが使えることは大きなアドバンテージだと感じます。他のCADと比べても、2Dの編集機能では痒いとこに手が届く作図機能が多いと感じますし、3Dモデリング機能も手に馴染むツールが揃っています。さらに、建築の設計には欠すことのできないプレゼンテーションの一つであるCG作成では、Renderworksの高速なレンダリング機能が素晴らしすぎます。特にCINEMA4Dエンジンに代わったバージョン2011以降は、レンダリングが完了する時間が大幅に早くなっているため、手戻りがあった場合でも更新するスピードが格段に違います。

操作性でもう一つ上げるとすると、Vectorworksにワークシートという表計算機能を持っていることです。インターフェースは決して良くはありませんが、基礎伏せ図のレイヤに掘削位置をクラス分けして描くことで、図面と同時に土量、型枠、コンクリート量、鉄筋量の拾いが同時進行で行えます。拾いの根拠図も作成できますので、実施設計には欠かせません。その他、工学情報コマンドでは、断面諸係数を算出できる便利なコマンドだと感じます。特に、不整形だと手計算は至難の業ですので、痒いところに手が届くとは、まさにこの事です。

BIM(Building Information Modeling)

建築ではBIM(Building Information Modeling)を取り入れた設計がはじまりつつあり、Vectorworksもバージョンを重ねる度にBIMツールや機能が充実してきています。Vectorworksの外部参照機能や断面図作成機能、スラブやストーリ機能、プラグインオブジェクトとワークシートの連動、データ互換の拡充はその代表的なものと言えるでしょう。

しかし、VectorworksをBIMとして使用する大きなメリットは、設計という行為では欠かせない基本的な機能である「2D作図」が断然強いことです。3Dモデルのあらゆるところに2Dの作図ツールが使用できる、言わば、3D作図ができることも可能性を膨らませてくれます。
Vectorworksは、他のBIMソフトとは違い、建物全てをモデル化する必要がなく、BIMの利点を生かしながら、今までのCADとしての作図方法も取り入れ設計業務が行えます。私にとって「好いとこ取りのソフトウエア」と言えます。

また実際のところ、BIMデータで納品することは今のところ全くなく(今後は変わっていくのでしょうが)、自分の設計の一部をBIM化して効率化を図るためだけに使用している現状もあります。そういう意味でも私にとってのVectorworksは、図面を描くCADとしても使えますし、プレゼン資料作成のDTPソフトとして、また面積や単純梁の計算機としても使え、場合によっては、BIMソフトにもなるといったように、使う人や用途によって顔の表現が変わるのも面白いのかも知れません。

Vectorworksでの設計業務

私自身、大学卒業後(日大理工学部海洋建築工学科)東邦アセチレン(株)技術部一級建築士事務所にて主に、ガスタンク基礎の耐震設計、工場等の設計に携わりました。帰省後、ひらのしん設計事務所を開設し、現在に至るわけですが、開業当時から下北には構造設計・設備設計の外注先がなく、自社にて全ての設計をこなさなければなりませんでした。それから25年ほど経ちますが、技術の進歩とともに設計の分業化が進む業界の流れに反し、建築、設備、構造と、ありとあらゆる設計が舞い込む設計事務所となっています。

前職が設備設計専門ということもあり、消防設備の設計は得意分野のひとつで、さらに、避難安全検証や省エネ計画書の作成も行っております。そんな設計事務所をささえるVectorworksは、私にとって鉛筆と紙と定規、模型、数量の拾い出しといった作業を同系列で行える手足のような存在です。私にとってのVectorworksは、機能が豊富なので超多機能シャーボ、電卓と言えるでしょう。

CAD・CGソフトウエアでは浮気心を出して購入したものがほとんどですが、総合能力でVectorworksを超えるソフトウエアは今のところ出てきていません。私は、Vectorworksの新しい機能が楽しみで、このワクワク感が使い続けいている原動力になっているのかも知れません。

【講演者情報】

有限会社システム平野

代表取締役 平野 伸 氏

Vectorworks2013新製品発表会 全国キャラバン弘前(2013.1.22)

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