ユーザ事例 & スペシャルレポート

建築・インテリア設計で高いシェアを持つ2D3D汎用CADソフト「Vectorworks(ベクターワークス)」。優れた拡張性を備える同ソフトが店鋪・インテリアの設計でどのように生かされているかを探る。

今回は店舗設計のみならず、運営や経営も事業として手掛けるミュープランニング アンド オペレーターズに取材し、使い勝手や活用法を聞いていく。


インテリアデザイナーに聞く Vectorworks活用レポート

「KICHIRI 渋谷宮益坂下」(商店建築 2012年12月号 P.88)は、「新日本様式」をコンセプトにうたうカジュアルダイニング。二層に分かれた店内は小上がり席を中心として、ターゲットの中心となる女性を意識した設えだ。インテリアデザインは、「HAKU(=白)」をキーワードとし、モノトーン調のモダンでシンプルな中に、和をモチーフとした素材を取り入れることでバランスの良い居心地を生んでいる。デザインを担当したミュープランニング アンド オペレーターズのソフト事業本部設計部・尾崎大樹氏は、国内外問わず、飲食店を中心に年間40件ほどの物件を手掛ける、同社の中核となるデザイナーだ。クライアントの要望をまとめつつデザインを起こし、プロジェクトチームの中で全体を統括していく立場である尾崎氏は、コミュニケーションツールとしてのVectorworksを評価する。

「常に同じやり方というわけではありませんが、クライアントへのプレゼンテーションや、チーム内での情報共有にまずVectorworksの図面がベースにあって、そこから他のソフトなども活用して、コンセプトシートや3DのCGを作成していくことが多いですね。CAD上でのテクスチャーやカラーリングの検討もしやすいと思います。スタッフによっては、Vectorworksで空間のボリュームを把握してからスケッチを行ったり、最初からVectorworksを用いてプランを考えていく者もいます。社内で統一した使い方を定めていないので、チーム毎、プロジェクト毎にそれぞれルールを決めているのですが、スキルに応じて自由度の高い使い方ができるというのが実感です」

外部の協力業者やデザイナーとのやりとりも「まずはVectorworksのデータから」(尾崎氏)。店鋪デザインの業界ではCADのデファクトスタンダードとなっているため、データ上の齟齬が生じることもほとんどない。Vectorworksでは下位互換性も高めており、最新バージョンでは5バージョン下までデータを共有できる。

また同社では、店鋪で使われる家具や照明器具もオリジナルでデザインすることもあるため、その設計にもVectorworksが活用されているという。「普段の業務の中で感じるのは、Vectorworksのデザインツールとしての使いやすさです」と尾崎氏。製図・図面管理のソフトという位置付け以上に、多彩な貼り込みや容易な3D化などでデザイナーの感覚的なイメージを図面化しやすい。このことが多くのインテリアデザイナーに支持されている理由の一つと言えるだろう。

商店建築 2012年12月号掲載)

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