ユーザ事例 & スペシャルレポート

建築事務所や設計デザイン事務所で、製図や3Dレンダリングなどに利用されているCADソフト「Vectorworks」。さなざまな施設や店舗設計を手がける株式会社インフィクスの代表・間宮吉彦さんに空間デザインワークについて、「Vectorworks」を使用するスタッフにその活用法と魅力を語っていただきました。


空間に込められた“空気感”を創出する。

コンセプトとデザインワーク。空間を設計する上で大切にしている要素です。 会社設立前に、大阪でいち早くMacを導入し、CADソフトVectorworksも早期に採用しました。ただ、僕自身がイメージを表現するのは、手描きのスケッチという昔からのスタイル。クライアントとの打ち合わせの場で、さっと描いて確認することもあります。

頭の中にあるものをまず言葉で表し、言葉だけでは限界があるから絵や写真で見せる。要は言葉をどう形にするか、それが線となって図面化されます。加えて、空間デザインはマテリアルが重要です。素材が持つ質感だったり強度だったり。たとえば、紙のように薄い鉄板で、鉄の強さを生かしながら軽やかさや柔らかさを表現するのも技術。コンピュータだけでは完結しないデザインワークの積み重ねでできあがるのが、造形です。単に外から見た箱としてではなく、中に入ると商品や料理、サービスがあり、人がいてこそ評価されるもの。与えられた物件の条件、環境、時代、クライアントの嗜好など、あらゆるものをすくい取り、フィットするものを創出しなければなりません。だから、つくるのは造形というより、独特の空気感。空間って曖昧で、その曖昧なものを僕らはデザインしているわけです(笑)。今の時代、マス的なものへの安心感があるのかもしれないけど、常に“新しくて、刺激的なもの”をつくっていきたいし、いい意味で裏切っていきたい。

最近は以前にも増してローカリティを意識します。大阪独自の文化の中で育ち、沁みついているからこそ、南船場や堀江に調和した店がつくれ、まちに人が集うきっかけとなり得たのかなと。これからは、環境、建築、インテリア、家具…と、ひとつの枠組みで捉える時代ではないと思っています。デザインは決して特別なものではなく、使う人や住まう人にとって楽しくて、生活に必要なツールであるべきだし、そんなデザインをトータルで手がけていきたいですね。

Vectorworksでスケッチを図面化する

インフィクスでは、間宮さん以下スタッフ 7 名ほどで、大小さまざまな設計デザインに取り組んでいます。

物件ごとに担当を決め、プロジェクトによっては数人のチームで進行するのですが、インフィクスとしての方向性が決まれば、実際に具現化していく実作業が担当デザイナーの仕事になります。飲食店のクライアントであれば、席数は?といった導入計画から打ち合わせし、デザインにかかります。その方向性を示す間宮さんのスケッチはわかりやすい。人物も描いていて、どういう雰囲気を出したいのかがよく伝わってきます。

僕の場合、スケッチをもとにVectorworksで平面図を起こし、それをDXFに変換し、モデリングソフトのformZで3次元のCGやパースに、というのが基本的なデザインプロセスです。自分なりのアイデアやカラーも盛り込みつつ、常にコミュニケーションをとりながら修正や調整を加えていきます。

表現したいことを提示できるツール

初めて使ったCADソフトは、学校で使用していたAutoCADでしたが、インテリアデザインに特化したゼミに入り、先生がVectorworksを推奨していたので、独自に購入して勉強したんです。

当時から今でも実感するVectorworksの使用感は、絵的な図面を描け、そのまま実施図としても使える、とても快適なツールだということ。席数を瞬時にひろい出す機能もあり便利です。同時に、ハッチングや模様入れ、テクスチャー貼りや色付けをして、「この床はブルーのタイルです」といった素材の表現も簡単にできるので、プレゼンテーションツールとしてかなりの優れモノだと思います。

Vectorworksは3次元CADでもあるので、使っていない便利な機能がたくさんあるんでしょうね。今のところ、僕にとってのVectorworksは、スケッチから図面化することがメインですが、デザイン作業の大半はVectorworksで行っています。作業をいかにスムーズに進めるかが肝なので、いくつかのソフトを使い分ける事もあります。ただ、その中でもVectorworksは「表現したいことを提示するためのツール」として、なくてはならない存在なのです。

主に担当している飲食店のデザインは、その時々やクライアントの考えによっても変わるでしょうが、バールのように人が楽しく過ごせる「にぎわい」のある空間にしたいと思っています。

【取材協力】

株式会社インフィクス http://www.infix-design.com

間宮 吉彦 氏

この事例は株式会社ゆめディアの許可により「ライフ&デザイン」に掲載された記事をもとに編集したものです。

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