ユーザ事例 & スペシャルレポート

「Vectorworks2012 全国縦断 新製品発表キャラバン」にて講演していただいた内容をご紹介します。


Vectorworks 3Dで考え魅せる理由

メリットとして、工事前に全体の配置やそれに伴う問題点(敷地と廻りの高さや背景の関係)を確認・修正ができる点や、工事前に施主とCGで打ち合わせできるのため工事中の変更がない点、また、完成イメージが湧くので予算がつきやすい点などがあります。また職人さんとのイメージ共有が早期からできる点も挙げられます。これらが全てVectorworksで完結できるのも良いですね。ただ、デメリットもあります。こだわりすぎて設計に時間が掛かってしまうため、年間で施工できる数が決まってしまう点と、完成した時の施主の反応が「CGと一緒だね」と薄いことです。(笑)

3Dから図面化

私は、VectorWorksバージョン8のころから、2Dで下図を作った後、直ぐに3D設計へ移行し樹木や平板などを一つずつ配置しモデリングを行っています。VectorWorks導入当初から、3Dモデルから図面化・数量の拾い出しという、今の建築で言う「BIM」に近いことを行っていたのかもしれません。枕木や石材を重ねた時など数量の拾い出しは、平面図から読み解くのは難しいですから、3Dで作成する意味も大きいと思います。

作成した3Dモデルは、シートレイヤとビューポートを使うことで、平面図にも立面図にもなります。また、2D図面を描いている訳ではないので、3Dモデルに変更を加えさえすれば、シートレイヤで参照させたビューポート内容も変更されます。図面を「描き直す」という感覚ではなく「更新する」という感覚ですね。私も実際に現場に出て、3Dから作った加工図で階段やデッキなどの木材加工をしますが、きっちり組み上がる安心感はCADならではですね。

Renderworksが良くなった!

RenderworksがLightWorks社のエンジンだった導入したての頃は、簡易的なレンダリングのみで、仕上げのCGはCINEMA4Dを使っていました。それでも、バージョンを重ねる度、使いやすくなりましたね。バージョン12では環境光のHDRIが使えるようになり、2008からはファイナルギャザーが追加され、より自然に近い雰囲気が出せるようになりました。

しかし、CINEMA4Dユーザでもある私としては不満もありました。それはレンダリングの「スピード」です。これが、Renderworksバージョン2011からCINEMA4Dエンジンに代わり驚愕したわけです。私のやりたいことの殆どがVectorworksとRenderworksで可能となった訳です。CINEMA4Dは静止画作成から動画や夜景画作成と役割が代わりました。

施主の敷地内に限らず隣接する敷地も細かくモデリング

いきなり3Dで作図することもありますが、基本は、2Dの図面を描き、そこから3Dのモデル化を行っていきます。よく使うツールは3D多角形であり、各頂点を測量した高さまで移動し変化をつけていきます。かなり原始的な手法ではありますが、測量した高さを正確に反映できる点が良いですね。施主の建物は、開口部の細部に至るまでしっかりとモデリングします。なぜならば、室内から庭がどのように見えるのか、近隣の建物や敷地内で、気になる障害物は無いかなど検証をするためです。

近隣の敷地も同様に3Dモデル化していますが、建物はリアリティを求めながらも簡単に作成するために試行錯誤を繰り返し行いました。その一部を皆様にご紹介します。建物は壁ツールで作成し、その壁に現地調査の際にデジタルカメラで撮影した写真をマッピングしています。要は、ボリュームと雰囲気を出し、手間がかかる開口部の建具関係や壁素材の作成を大幅に省略しているのです。

手法は簡単です。近隣住宅の写真は画像加工ソフトで変形し、テクスチャの元となる画像を作成しています。それをVectorworksの壁に貼り付けているだけです。なお、近隣住宅の写真撮影は、CG化する際に、影が写り込まないよう曇りの日がおすすめです。近隣住宅テクスチャは、この案件でしか使用できませんが、顧客とスムーズに打合せを行うためにも、しっかり作り込んでいます。

魅せるため道具「CameraMatch」は最高のツール

CameraMatchプラグインが便利です! Vectorworksの中で、デジタルカメラで撮影した写真と、CADでモデリングしたものをマッチング(フォトモンタージュ)することが可能なのです。対象となるモデルだけ作れば良いのでCG完成までの速さは抜群です。

また、背景に使用する写真のアングルでCGが作成されるため、現場では、でき上がりを想像しながら色々な角度で撮影をしておきます。CameraMatchはアバウトに使い合成させることもできますが、私は、しっかりと測量データを押さえ行っています。そのデータの取得には、Leica社の器具を使っていますが、単体で使用した場合、計測時に手振れが起きやすいという点がありました。より正確なデータを取得するためにも、解決しなければならない点がいくつかありましたが、A&A社の「いいものは使おう、無いものは創ろう」の精神を見習い、器具を載せる台座を自作しました。

今では、LeicaとVectorworks、そしてCameraMatchは、仕事を進める上で、なくてはならない道具になりました。微調整は若干行ってはいますが、撮影した写真にVectorworksのモデルがしっかりマッチングしていることが分かります。これを使うことで、近隣の添景物を作らなくて済むので、急ぎの案件ではとても助かっています。

建築家の皆様へお願い

エクステリアを設計する者として、建築家の皆様へお願いがあります。建物の基本GLをできるだけ下げて頂きたい、室内だけでなく外構も含めバリアフリーに。ただ、寒冷地では駐車場の勾配は5%以内にして欲しいのです。これは駐車場が凍結した時に車から降りる際、転倒する危険性が高いためです。

また、玄関の外壁タイルに予算をつぎ込むのではなく、これから置くであろう物置にも少し予算を廻し造形物として造って欲しいのです。建物は立派でも、エントランスの周辺に建物のデザインとそぐわない物が置いてあるだけで全体の価値観まで下げ兼ねません。

最後に、2~3本でいいので庭木を植えるように計画して欲しいのです。なぜならば、敷地の空間が広がって見えるからです。植える木は、成長の遅い中低木が良いと思います。5年、10年後の住宅を目に浮かべ、プランを立ててください。

【講演者情報】

ドモンランドスケーププラニング 土門 一成 氏

Vectorworks2012 全国縦断 新製品発表キャラバン(2012年3月)

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