ユーザ事例 & スペシャルレポート

株式会社パルコは商業施設のプロデューシング力を強みとし、日本国内では19店舗のショッピングセンター「PARCO」を運営しています。テナントと一体となって、お客様に楽しんでいただける商業空間の創造を目指し、店舗の改装も定期的に行われています。また、研修制度の一環としてVectorworksカスタマイズセミナーも毎年ご利用いただいています。テナントマネジメント業務の現場でVectorworksがどのように活用されているかをご紹介します。

今回、2011年に25周年を迎え、大規模な改装が行われた熊本パルコでテナントマネジメント業務を担当し、カスタマイズセミナーの受講経験もある桑島 浩
一(くわじま こういち)さんにお話をうかがいました。


さまざまなケースを想定しながら日々テナントと交渉を行う

-仕事の内容について教えてください。-

マーケティングによって店舗全体の問題点を抽出し、売り上げを向上させるためにどうするか、ターゲット層の見直しや改装のコンセプト含め長期、短期、両方の視点から戦略を立てています。改装は主に年2回行いますが、長期的には2年から3年先を見据えて考えています。テナントとの交渉は、多くの場合パルコ側からアプローチし、コンセプトやターゲット層の説明から始めて先方に出店の可能性があるか見極めることからスタートします。おおむね出店合意がとれた段階で、面積や出店場所を提示して詳細を詰めていく流れです。また、新店交渉だけでなく、売り上げの思わしくないテナントもありますので、フロア移動の可能性なども含めて、テナントと一体となって売り上げを上げる手法を検討します。さまざまなケースを想定して交渉を進める仕事ですので、試行錯誤しながらパズルを解いていくような大変さはあります。

店舗にVectorworksが導入されるまでの出店交渉は非効率的だった

-Vectorworksはいつごろから使っていますか?-

本社の建設/デザイン部では以前からVectorworksを使っていましたが、店舗に本格的に導入されたのは2010年の春頃です。Vectorworks導入前の出店交渉は、ある程度の段階まで手描きで対応していました。正確なリース面積が出せないレベルの図面で交渉し、だいたい固まった段階で建設/デザイン部に図面作成をお願いするという進め方です。図面作成や修正を何度も建設/デザイン部にお願いすることは、日程、人員共に難しいこともあって、未確定要素が多い状態での交渉は、非常に手間がかかるわりに内容は精度に欠け、とても非効率でした。

仕事を効率的に進めるためにVectorworksの修得は必須

-どのようにVectorworksを覚えたのですか?-

もともとCADを使った方が良い場面は多々あったのですが、まったく触ったことがなかったので、操作が難しいのではないかという先入観がありました。ですが、Vectorworksを使ったことのある設備担当者から、基礎を教えてもらって、実際に使ってみると圧倒的に作図が早く、直感的に操作できたので早めに覚えたくなりました。既存店舗図面は建設/デザイン部から図面作成ルールに基づいてレイヤ設定などがされた使いやすい状態で提供されるので、大きな変更がなかった研修までの約半年間は独学で少しずつ慣れていきながら、なんとかVectorworksで仕事をしていた感じです。ただ、その後に大きな改装が控えていたので、Vectorworksを早く修得しないと仕事がスムーズに進められないなという危機感はありました。

基礎から学び、実践ですぐに活用できる点は強みに

-カスタマイズセミナーを受講した感想は?-

熊本パルコでVectorworksを使って仕事をしているのは、自分一人ということもあって真剣に修得しました。カスタマイズセミナーは初歩的な内容も気兼ねなく質問できる環境で、ほぼマンツーマンで丁寧に教えてもらえるので、とてもわかりやすかったです。基礎と応用編の両方を受講することで、かなり使えるようになりました。基本操作の解説の後に、実際の店舗図面を使って区画の割り直しを自習形式で進める内容のため、現場ですぐに活用できます。さらに、わからないところを事前に把握してから受講すると、カスタマイズセミナーの効果は一層高くなると感じます。

Vectorworks導入によってスピードと精度は格段に向上

-Vectorworks活用のメリットは?-

テナントとの出店交渉は毎日のようにありますが、イメージしている内容がすぐかたちにできる上、クライアントの希望通りの面積で、建設/デザイン部にお願いすることなく提案図面が何パターンも作成できる点は、Vectorworks活用の大きなメリットです。交渉にあたって気持ちの上でもかなり楽になりました。それまでは、面積も場所もなんとなくという状態の図面での交渉でしたから自信が持てない上、パターンの提案もできずクライアントにもわかりづらいものだったと感じます。そう考えるとVectorworks導入によって、社内的にも対外的にも選択肢が広げられる上、作業効率も格段に良くなって、スピードと精度は圧倒的に向上しました。

Vectorworksで苦労することはほとんどない

-Vectorworksの便利な機能は?-

四角形ツールや多角形ツールなどはよく使っています。寸法も自動で測れますし、正確な面積もデータベースの活用ですぐにわかるのでとても便利です。貼り合わせや切り欠きも便利な機能だと思います。その他、フロアの区画を色分けして改装時期やさまざまなパターンを表現しています。いろんな描き方があるので、いろいろ知っていれば使い分けや応用が利くと感じます。今のところ、Vectorworksのほんの一部の機能の活用にとどまっていますが、苦労することはほとんどありません。Vectorworksにどういう機能があるのかまだまだわからないことばかりですが、ひとつずつ覚えることで作業スピードと精度がどんどんあがるので便利です。

さまざまな可能性を考え時代にあった魅力ある店舗づくりを目指す

-テナントマネジメントで重要なことは?-

テナントに対して、店舗全体の方向性をきちんと提示していくことが重要です。例えば、エスカレーター付近の視認性を良くするため、什器の高さやフィッティングルームの位置には制限を設けていますし、全体やフロアのイメージをできるだけ合わせていくといったことも、テナントをコーディネイトする上では大切になります。今は来年の改装に向けてフロアの区画を考えていますが、さまざまなパターンが考えられますから、同じ面積でも違うフロアでの成立の可能性や、区画を大きくしてメガショップの出店を考えたり、逆に小さい区画でテナント数を増やすなど、交渉を進めつつそれぞれの可能性を検証しています。そして、法律的な面で区画割りが成立するかどうかは設備担当と相談しながら理想的な方向にできるよう進めています。変化の早い業界ですから、時代にあったものを常に追いかけていかなくてはいけないということはあります。魅力ある店舗づくりをするために、いろんな可能性を考えながら区画割りのプランを検討していくのは大変な面もありますが、反面Vectorworksの活用でさまざまな検討がタイムリーにできるので楽しいです。

2次元のスキルアップをしながら3次元にも挑戦したい

-Vectorworksを使って取り組んでいきたいことは?-

Vectorworksを使うことでスピードや精度があがっている一方で、それまでやり切れていなかった仕事が増えている面もありますが、良い方向に向かっていると感じます。テナントへの説明も交渉も全面的にやりやすくなりました。ですが、プレゼンテーションは2次元の図面やイメージ写真で、高さは数値で示して下がり天井の位置を伝える程度にとどまっています。実際には高さ関係で納まらないということもあります。そういう意味で、今後3次元でプレゼンテーションして欲しいという要求などが出てくる可能性はあります。Vectorworksはまだまだ初歩段階の2次元の活用にとどまっていますが、3次元が活用できるようになると、説得力あるフロアイメージを社内にも対外的にも伝えやすくなると感じますし、強みになると思います。今後、2次元については実践を通してさらに使いこなせるようにスキルアップしながら、機会があれば、ぜひ3次元にも挑戦していきたいと感じます。

建設/デザイン部
デザイン担当
杉﨑 由香利 氏

建設/デザイン部 杉﨑 由香利 氏よりひとこと

パルコのビジネスの根幹はテナントビジネスです。魅力あるテナント構成で話題性・信頼性を高め、快適な空間を提供することでお客様を引き付けると同時に、いかに売り上げに結びつけるかを常に考えています。そのテナントマネジメント業務を担っているパルコ各店の営業担当向けに、3年前から改装計画立案業務の合理化とテナント区画平面レイアウト図の社内共有化を目指して、Vectorworksカスタマイズセミナーを取り入れました。昨年からは基本操作に加えて実務に即した課題作図中心の内容も盛り込み、実践的でわかりやすく楽しいと人気セミナーのひとつにもなっています。その結果、社員の操作技術レベルは著しく向上し、業務の合理化と情報共有が図られています。


ー取材を終えてー

商業施設運営におけるテナントマネジメント業務にも、業界の慣習というものがあるのだろうと思います。ですが、少なくともVectorworksを営業の社員が手軽に使えるようになることで、仕事のやり方が劇的に変わったことが取材で感じられました。その変化はテナントにとってのメリットも大きく、変化を受け入れて柔軟に対応していく姿勢は、どんな業界にも求められるのだろうと感じました。

エーアンドエー株式会社販売推進部 CR推進室 竹内 真紀子

【取材協力】

株式会社パルコ 熊本店 桑島 浩一 氏 http://www.parco-kumamoto.com/page/

株式会社パルコ 建設/デザイン部 デザイン担当 杉﨑 由香利 氏 http://www.parco.co.jp

(取材:2011年10月)

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