ユーザ事例 & スペシャルレポート

現代建築デザインに大きな影響を与えたドイツの国立総合造形学校「バウハウス」。株式会社バウハウス丸栄は、「バウハウス」の活動に共感し、その名称を社名に取り入れることで、常に時代の求める建築に貢献することを目指して空間を創造し、提供しています。その企画設計にもVectorworksは欠かせません。実際の商業空間の計画現場でVectorworksがどのように活用されているかをご紹介します。

今回、名古屋事業所で商業施設の企画設計を行っているSCソリューション本部企画計画部の課長 木造 明(きつくり あきら)さん、加知 健太郎(かち けんたろう)さん、三浦 広基(みうら ひろき)さんにお話をうかがいました。


企画設計のプレゼンテーション資料から実施設計まで幅広く活用

-Vectorworksをどのように活用していますか?-

木造 SCソリューション本部 企画計画部では主に商業施設全般の企画設計を担当しています。Vectorworksは企画段階から実施設計まで幅広く使っています。人によっては他のソフトを組み合わせるなど使い方はさまざまですが、作図だけでなく、プレゼンテーション資料作成にもVectorworksを活用しています。

加知 イラストレーターやフォトショップを組み合わせることもありますが、基本的には図面もプレゼンテーション資料もVectorworksを使っています。

想ったままのイメージを表現できるVectorworks

-Vectorworksのメリットは?-

木造 提案型の図面にVectorworksは向いています。クライアントに専門的な知識が無い場合でも、とても説明しやすい図面やプレゼンテーション資料が作成できます。

三浦 想ったままのイメージを図面に表現できるという点がVectorworksの良いところです。図面に手軽に色がつけられたり、リソースにタイルという機能も入って、特に提案型のデザイン図面を描くにはとても使いやすいです。

2Dから3Dまで、さまざまな機能を使って計画案を検討

-Vectorworksで便利な機能は?-

木造 レイヤプレーンで2Dと3Dの境をなくす平面グラフィックス機能はプレゼンテーションにも使える便利な機能だと思います。また、3Dで着色してよりリアルに表現していくと、クライアントもイメージがしやすくなりプレゼンテーションもスムーズにいきます。

加知 レンダリングや3Dは便利です。大型の店舗を計画する部署に居た時には、什器などをシンボルで配置し、ワークシートを使って数量の拾い出しができ便利でした。

三浦 3Dも便利ですし、レンダリングもよく使っています。以前は簡易レンダリングしたものを、フォトレタッチソフトを使って仕上げることが多かったのですが、レンダリングエンジンが変わったVectorworks2011からフォトレタッチソフトを使う必要もなくなりました。シートレイヤも手軽にプレゼンテーションに使える機能だと思います。その他、照明の配灯図でシンボルを使ったり、平面図でストックルームの棚に商品がどのくらい置けるか、ワークシートを使って計算式を入れておくと企画段階のシミュレーションにも便利です。

Vectorworksでいろんな表現ができることが強みに

-どのような手法でプレゼンテーションしていますか?-

木造 クライアントによってさまざまです。2Dの平面図、立面図、展開図に着色というケースもあれば、簡単なパースを添えたり、レンダリングした3Dの内観まで提出するなど三者三様です。ただ、タイトなスケジュールの中で、どのようなプレゼンテーションをするかはメリハリをつけながら考えていかなくてはいけません。そういう意味で、Vectorworksは2Dから3Dまでいろんな表現ができるので強みになります。

三浦 ワイヤーフレームで立ち上げて、それをベースにスケッチを描くという使い方をする人もいますし、アートレンダリングなどもおもしろい表現手法です。

2Dだけでなく3Dで表現することも求められる

-3Dで企画設計することはありますか?-

木造 2Dでまず描いて、そこから3Dにします。これからは3D表現が多くなってくると感じます。2Dの図面は専門知識がないとわかりにくい面もあります。そういう意味でも3Dの方がわかりやすく事業の決断もしやすいと思います。

加知 まず2Dで描いて必要があれば3Dにします。パースを描く前提がない場合は、3Dにしない図面もありますが、パースを要求される場面も多くなりました。

三浦 いきなり3Dで描いて、プレゼンテーションはシートレイヤに2Dで表現することもあります。複雑な空間などは、自分の頭の中で考えているだけでなく検討段階から3Dで描くことによって、空間の見え方など手軽に確認できる点はVectorworksのすぐれた点だと思います。

クライアントの要求に柔軟に対応できるプレゼンテーションが期待される

-これからのプレゼンテーションに必要なものは?-

木造 今後はクライアントの前でプレゼンテーションしながら要望を聞いて、その場で修正もできたらいいと思います。また、照明器具はメーカーに協力してもらいながら、提案書を仕上げるためそのメーカーの商品となりますが、ひとつのメーカーに偏ること無く器具の選択ができるように、配光データや照度分布などの検証がVectorworksでできるといいなと思います。

加知 説明する相手が担当者であれば、デザイン変更などはイメージや色目がわかる簡単なパースで説明できますが、先方の社内会議にかけるということになると、もっと精度の高いものが要求されます。クライアントの要求はさまざまですので、説明する相手によっていかに柔軟に対応できるかということが重要だと感じます。

三浦 これからはプレゼンテーションの方法もどんどん変わっていくと思います。例えば大型の商業施設では、3Dで描いて実際に歩いている様子を動画で見せながらプレゼンテーションするということも出てきています。また、テクスチャは、サンプルサイズでなく即テクスチャとして利用できるメーカーの製品がすべて揃っているととても便利だと思います。

想いを明確に伝えられるプレゼンテーションを目指す

-Vectorworksを使って取り組んでいきたいことは?-

木造 コンペなどは、相手に「おっ」と言わせるもの、期待させるものをつくりたいですし、何か提案する部分は常に盛り込みたいと考えています。また、表現手法や見せ方にも気を使っていきたいと考えています。

加知 プレゼンテーション能力も問われますが、設計意図を正確に伝えることが重要ですので、クライアントに提案する際にどのように表現し、想いを伝えていくかが常に課題と考えています。

三浦 本来は3Dの完成形がまずあって、その表現方法として平面図や展開図があるのが正しいプロセスではないかと感じます。ですが、図面を描いていると2Dからだんだん3Dになっていくという感覚になりがちです。ですから、2次元の図面をクライアントにどのように説明し、いかに3Dをイメージさせるかということに気を使っていきたいと思います。

SCソリューション本部
執行役員 本部長
清水 正人 氏

本部長 清水 正人 氏のコメント

使い勝手や商品がいかによく見えて売れるかという観点も含めて、こんな店舗ならつくりたいと思わせる設計がまずあって、それを正確に伝えられることが重要です。完成形のようなものが要求される場合もあれば、クライアントが一緒に考え、意見を言える余地を残すという場合もあります。図面やプレゼンテーション資料はコミュニケーションツールであり、設計者は常に状況に応じた対応が必要になります。ですから、その表現手法を増やすツールでもあるVectorworksを活用して、相手に「いいね」と言わせるために、どういう勝負をするかがある意味設計者の使命です。そのために引き出しをどれだけ持てるかも重要になります。


中部第I本部
執行役員 本部長
佐野 泰規 氏

本部長 佐野 泰規 氏のコメント

お店のデザインは、意匠性だけでなく商品が売れる店舗にするためにどうすればいいか考えることが設計の根本です。そのことも踏まえてクライアントごとに細かくヒアリングをして設計をしていくことが重要です。そして、図面やプレゼンテーション資料は手描きからCADになって、修正や編集はとても便利になったと思います。ただ、図面やパースが容易に作成できると考えるクライアントもいるため、要望がエスカレートする傾向にあります。そのような中で、設計者はさまざまな要望に応えつつ店舗が完成したときに、「イメージ通りだね」と言われるように伝えていくことも求められます。


ー取材を終えてー

先日、別の取材先で「ケヴィン・リンチの『都市のイメージ』は都市のエレメントを2次元的視点で決めているけれど、本来人間はもっと3次元で都市を認識しているのでは?」という話題がでました。今回は、空間を考える正しいプロセスの話がありました。2Dと3D、業界の慣習や常識として行われていることを疑ってみる視点も必要なのかもしれません。

エーアンドエー株式会社 販売推進部 CR推進室 竹内 真紀子

【取材協力】

株式会社バウハウス丸栄 http://www.bauhaus-m.co.jp/

SCソリューション本部 執行役員 本部長 清水 正人 氏
SCソリューション本部 企画計画部 課長 木造 明 氏
SCソリューション本部 企画計画部 加知 健太郎 氏
SCソリューション本部 企画計画部 三浦 広基 氏
SCソリューション本部 企画計画部  西堀 有紀 氏
中部第I本部 執行役員 本部長 佐野 泰規 氏

(取材:2011年7月)

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