ユーザ事例 & スペシャルレポート

建築から製造、舞台設計まで幅広い分野で使われている3次元CAD「Vectorworks」を展開するエーアンドエーは、2010年12月2日~3日、東京・原宿で「Vectorworks Solution Days’10」を開催。同ソフトのユーザーである著名建築家やプロダクトデザイナー、舞台の音響技術者が講演した。また、最新版のVectorworks2011で強化された機能の紹介や、展示会も同時開催された。その様子をリポートする。


開発元あいさつ

What's New Vectorworks & BIM/Rendering

Nemetschek Vectorworks社
CEO ショーン・フラハティ 氏

従来の2D作図機能と、パワフルな3Dモデリング機能がシームレスに連動するVectorworksのユーザーは、80%が北米以外のユーザーだ。そこで当社は2010年、社名を「Nemetschek NorthAmerica」から「Nemetschek Vectorworks」に改めた。

最新版のVectorworks2011には、170以上の新機能を搭載した。その主要なポイントは5つある。

(1)3Dモデリングを2D作図並みに簡単にすること、
(2)パワフルなツールを増強すること、
(3)テキスト編集機能を強化すること、
(4)世界水準の可視化機能を備えること、
そして
(5)BIM機能を進化させることだ。

例えば、モデリングの基準平面を空間内に自由に設定したり、テキストや寸法線を傾いた空間に表示させた状態のまま編集したり、壁や床のBIMモデルを詳細に設定したりする機能を改良したのだ。

また、データベースシステムと「ODBC」によってアクセスする機能も追加した。これにより、BIMモデルの各部材の情報と、データベースで管理された部材の価格や仕様などの情報を直結することができるようになった。

システム間の相互運用性(Interoperability)なしのBIMは考えられない。当社は「オープンBIM」というコンセプトを提唱しており、BIMモデルのデータを交換する国際標準規格「IFC」によって他社の様々なBIM関連ソフトとスムーズにデータ交換を行えるようにすることを目指している。

その成果の1 つが、ワシントンD Cのリバーサイドビルのプロジェクトだ。意匠設計はVectorworks Architect 2010 、構造設計はScia Engineer 2010、設備設計はDDS-CAD7で行い、IFCによってBIMモデルデータを交換するワークフローが、実際に機能することを証明したのだ。ノルウェーのBIMによる設計コンペなどでもVectorworksユーザーが優勝している。

また、レンダリングソフト「Renderworks」には、MAXON社の「CINEMA 4D」のエンジンを今回のバージョンアップで採用した。64ビットのOSに対応しているため、レンダリング速度と画質ともに向上した。

基調講演

自作について

石上純也建築設計事務所
代表取締役 石上 純也 氏

まずは人工と自然の境界について考えたい。2008年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で、私は木々の間に4つの温室を建てた。柱の径を1.5cmにすることで、建築のスケール感は周囲の植物と同じになり、室内の温度や湿度を微妙に変えることで室内外の植物が一部、混在しどこが内か外かが分からなくなる。自然と人工を等価に扱うことで、建築が新しい風景を作った例だ。

山のような自然のスケール感を建築に取り入れられないかと考えた。1フロア700㎡で22階建てのビルの中に500㎡の住宅を作るプロジェクトだ。私が提案したのはビルの南東の1角を全フロアにまたいでつなぎ、階段で上り下りできる住宅だった。

既存のエレベーターもあるのでそれを利用することもできる。高さは90m近くもあり、下から上に上っていくと、まるで山に登るように見える風景も変わってくる。1年のうちにほとんど行ったことのない部屋も出てくるだろう。

プロポーションを変えることの可能性に挑んだのが、2005年に公開した細長いテーブルだ。サイズは長さ10m×幅2.5m×高さ1mで、天板は厚さ3mmの金属板だけで作った。当然、普通の板だと下に返ってしまうので上方向にあらかじめ曲げておき、テーブルの自重と器や花瓶などの上にのせた品々との重さと釣り合った時に平らになるように設計した。天板は屋根、脚は柱という抽象的に捕えると建築と相似した関係があり、家具と言うよりも建築を設計する感じだった。

森のような建築を作れないかと考えたのが、大学内で学生が創作活動などに利用できる「KAIT工房」という施設だ。約2000㎡の平屋建ての内部には壁はなく、代わりに様々な断面を持つ細い柱が星のように配置されている。森の中にテントを立てる時、それに合った場所が必ずある。この建築にも作業の目的によってふさわしい場所が見つかるだろう。

また、2007年に発表した「四角い風船」は、高さ25m、重さ1tの金属製の風船にヘリウムを充てんして空中に浮かぶようにしたものだ。風船の位置や角度が変化することにより、周囲の四角い空間との間に三角形の空間や低い天井が現れたり、空模様のように空間の形が刻々と変わっていく。こうした自然と抽象性の要素は、私の作品に共通しているものだ。

このほか、特別講演、Vectorworksデモンストレーションなどの詳細はPDFファイルをご覧ください

 

この事例は日経BP社の許可により「建設・不動産の総合サイト ケンプラッツ」で
2011年1月14日より掲載された記事をもとに編集したものです。

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