ユーザ事例 & スペシャルレポート

現在、CADによる設計環境では「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」と「3D設計」が重要になっている。エーアンドエーは2009年12月8日 東京、12月10日 大阪で「VectorworksSolution Day '09」を開催し、VectorworksのBIMソフトとしての活用例や、意匠、製造分野での3D設計の実践例について紹介した。その内容を報告する。

基調講演

BIMへの取り組みと最新版のコンセプト紹介

Nemetschek North America社
CEO　ショーン・フラハティ 氏

Vectorworksの3D機能は、自由曲面や曲線の処理や3Dプリンタで造形するためのSTL形式の書き出し、様々なレンダリング、そして堅牢なモデリングエンジン「Parasolid」の搭載など、このところめざましく進化してきた。この勢いは止まらず、今後もさらなる3D機能の改善を行う予定だ。

例えば2Dと3D作図機能の統合、3Dビューでの作業、パラメトリックな部品要素、3Dビューによるモデルの編集、そしてパフォーマンスの改善だ。

具体的には、2010年には統合ビューやどんな面でも2Dで扱える新しい平面作図、2Dと3Dを統合するUCS(絶対座標系)の導入、3Dスナップ、ディメンジョン駆動のモデル変更、そしてマルチプロセッサー対応の3Dカーネルといった新しい3D機能の開発を行う。

VectorworksがBIMによる設計プロセスで提供するメリットは、どんなものでもモデリングできること、設計プロセスに自由が生まれること、専門家同士が連携できること、設計に整合性が確保できること、そして効率化を実現することだ。

interview

デザイナーのためのBIMを追求

Nemetschek North America社 CEO
ショーン・フラハティ氏

Vectorworksが目指すポジションは「デザイナーのためのBIM」だ。2DCADでの設計実務に慣れた設計者が、BIMに移行するのはリスクが伴う。そこで、Vectorworksでは2DCADとBIMをシームレスにつなぐ機能を実装することにより、デザイナーの習熟度に応じて徐々に無理なくBIM化を進めていけるようにしている。

ここ数年、Vectorworksの機能拡張は、3D部分に重点を置いている。前バージョンのVectorworks2009から搭載しているモデリングエンジン「Parasolid」はその典型的な例だ。この本格的エンジンの採用により、ミュンヘン駅のバスターミナルなど、大規模なプロジェクトも無理なく設計することが可能になった。

さらにBIMに対応する他のCADや解析ソフトとの連携を強化するため、BIMの国際ファイルフォーマット「IFC」との互換性向上にも日々、取り組んでいる。その結果、複雑なBIMモデルも建物の属性情報を保ったまま、他のソフトとデータ交換することができるようになった。日本ユーザーの要望については、Nemetschek North America社のCTO(最高技術責任者)が来日するなど、積極的に開発に盛り込む努力をしている。また、先般エーアンドエーより発表のあった、福井コンピュータとの業務提携において、10万点にものぼる日本製の建材CAD部品データをVectorworks上で利用できるように取り組むことは、まさに日本ユーザーの利便性を高めるものだ。

基調講演

Vectorworks CADDからBIMワークフローへの移行

Nemetschek North America社　Project Architect, Integrated Practice
ジェフリー・W・オゥレット氏

BIMがCADと違うのは、図面の代わりにデータベース化された3Dモデルを使うことにある。その結果、BIMでは図面の精度や整合性は自動的に保たれるほか、プロジェクトに関する情報が様々な専門家の間で共有できるというメリットがある。

その結果、BIMはCADに比べて高い生産性を発揮する。2DCADベースの設計体制を取っていると、いかに効率よく作業を行い、最高のIT(情報技術)で武装しても、BIMの生産性には追いつかないのである。

Vectorworks Architectでは、CADによるワークフローからBIMによるワークフローに移行しやすくするために、次のような機能を提供している。まずは「親しみやすさ」だ。2DCADユーザーがスムーズに3Dモデルによる設計に移行できるようにするため、Vectorworksでは2Dツールと3D/BIMツールはほとんど同じようになっている。ユーザーはモードを変更するだけで、2Dと3Dの表示を行き来できるのだ。

次に「柔軟性」だ。2Dでの作業における柔軟性は、3DやBIMにもそのまま引き継がれ、ユーザーは想いをそのまま形にすることができる。最後に「力強さ」だ。本格的モデリングエンジン「Parasolid」を搭載したVectorworksは、3Dでも大規模な建物や施設を無理なく扱うことができる。