ユーザ事例 & スペシャルレポート

EVOLVE ”〜 進化 〜”をテーマに開催した「Vectorworks 2013新製品発表会 全国キャラバン」にて講演していただいた内容をご紹介します。


業種を問わない設計ツール Vectorworks

舞台照明の設計も他の設計と同様に、一度で図面が仕上がることはなく、必ず変更や修正といった手戻りが発生します。その手戻りを如何に簡単に、そして整合性を保つためにはどうしたら良いのかを常に考えて設計に取組んでいます。また、その設計の意図を現場の作業者だけでなく、依頼者にも的確に分かりやすく伝える必要があるため、その道具としてVectorworksを選択しています。

私は、建築やインテリアといった業種ではなく、舞台やミュージカル、コンサートと言った設計に関わる仕事をしており、そこでも同じく図面というものが存在します。私の扱う図面には、仕込図というもがあり、舞台の照明の配置や配線を記したものを指します。この仕込図をもとに現場の技術者が動く訳ですが、その前に、ステージの依頼者にも的確に伝えなくてはなりません。現場を「作るための図面」と依頼者に「説明するための図面・3D」どちらも重要な情報を扱えるのもVectorworksの良さといえるでしょう。

欲しい機能は自作できる強みがあるVectorworks

Vectorworksは、「こんな機能やツールが欲しい」と思ったときに、実装されている開発言語"VectorScript"で自作の機能が作れてしまうのも魅力の一つです。私は、C言語やその他の開発言語を学んできていません。もちろん、思い通りのスクリプトに組み上げるためには大変な思いもしましたが、その反面、Vectorworksの奥深さを知りましたし、楽しさも覚えました。

VectorScriptはリソースブラウザから新規リソースで、VectorScriptを選択し実行すると、エディタが立ち上がります。ここに、スクリプトを入力することで、図面と連動した操作をカスタマイズするツールを作っていくことが出来ます。私が今でも実務で使用している「舞台照明仕込用プラグイン」はこのスクリプトを使ったものです。照明器具を指定するだけでコンモ線を描画することができ、また、フェーダー表にパッチ(割付)することにより情報がリンクしますので、矛盾のない書類を容易に作成・編集することができます。

必要な機能を必要なときに

Vectorworksは、2D/3Dの機能を備えている訳ですが、必要なときに必要な機能を使えるというメリットがあります。一言でいうと制約が少ないということになるでしょう。他の3DCADであれば、使い方にルールや手順が必要ということを良く聞きますが、Vectorworksは使い手が使いたいように使えるということです。またクライアントによって使い分けることもできます

Vectorworksの良さを発揮することができるのが、シートレイヤとビューポートという機能です。シートレイヤは、デザインレイヤの情報を集約することができることや、集約した図面に注釈やグラフィックを簡単に追加できることは大変便利に使用しています。私の場合、このシートレイヤの機能を使い、舞台の進行表を作成しています。この進行表は、舞台を作る側、進行して行く側、管理する側の共通の台本となっており、描かせない道具であります。このようなものもVectorworksで制作できる良さがあります。ここまでくるとDTPソフトと一緒ですね。(笑)

私の仕事になくてはならないシートレイヤ

先程、台本の話しをしましたが、この台本作成には、シートレイヤという機能を使って作成しています。ここの部分を少し詳しくお話ししましょう。Vectorworksには、デザインレイヤという図面やモデルを描くシート(空間)と、その図面やモデルを一カ所にまとめて台本のように情報をまとめていくシートレイヤというシート(空間)があります。デザインレイヤとシートレイヤは相互に連動しており、それをつなぐ役割が「ビューポート」いう穴(覗き窓)になります。

私の場合、ホールの図面や3Dモデル、照明の仕込図、フェーダー表といった現場に必要な図面をデザインレイヤに描き、そのレイヤやクラスの見え方を指定し、ビューポートで、シートレイヤに配置しています。Vectorworksは上から見れば平面図、斜めのアングルから見ればパースと視点を切換えることで、様々な表現が可能ですので、先程配置したビューポートを横にコピーし、ビューポートのアングルをデータパレットから「斜め右から見る」に切換えることで、即座にパース図に切換えられます。このビューポートは、共に同じデザインレイヤの情報を表示していますので、デザインレイヤの図面やモデル形状を変更さえすれば、2つのビューポートの情報は連動して更新されます。

配置したビューポートは、後からレイヤの見え方、クラスの見え方の表示・非表示を変更することもでき、スケール(大きさ)を変更することも可能です。図面を切り取りたい場合も、デザインレイヤ上で、切り取りたい部分に四角形ツールなどで図名を描き、ビューポート作成を実行すると、図形で囲まれた範囲の図面だけ切り取ってシートレイヤに配置することもできます。シートレイヤは、デザインレイヤと同じように、図形を描いたり、色を付けたり、文字を挿入したり、写真を貼り込んだりと同じことが可能です。プレゼンテーションボードを作成する感覚に近く、私の場合、台本を作成していく機能としてとても重宝しています。

2D図面と3Dモデルを併用する

私の仕事の場合、必ずしも3Dが必要ということではありません。照明のエンジニアに指示を出す場合には、2Dの仕込み図があれば十分に伝えられます。しかし、2Dだけでは伝えることに限界があるとも考えています。例えば、主催者(依頼者)への見せ方です。2Dの図面を元に話を進めていった場合、ステージ終了後に「あそこはこうすれば良かった」「こんなはずではなかった」と思われる場合もあります。これは、初期の打合せから十分に意思疎通が取れなかった結果だと思いますし、次回の仕事への影響も考えられます。そこで、3Dで魅せる必要がある訳ですが、"3Dを作る"だけに時間を割くことも出来ません。その点、Vectorworksは融通が利くのです。全て3Dで作る必要がなく、3Dと2Dを融合させることができるのです。

例えば、照明の仕込み図(2D)から、ステージと雛壇、サイド幕、袖幕だけを3D化し、バック幕の絵を2Dで差し替える手法です。これでも十分に必要なことは伝えられますし、時間の短縮にもつながります。また、Vectorworks2013であれば、簡単に2D図面を3D的にグルグル廻すこともできるため、ボリュームとしてみせたい部分、例えば壁とステージ周り、幕を柱状体化してあとは2D図面で見せることができます。こうしないとダメとか、こういう操作方法でしかダメというような制限がないのもVectorworksを使うメリットの一つで、使う人の数だけ表現の方法もできる訳です。

【講演者情報】

株式会社 宮崎舞研 http://www.buken.co.jp/

取締役 木村 喜見 氏

Vectorworks2013新製品発表会 全国キャラバン鹿児島(2013.1.15)

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