SimTreadと逃げ地図

「避難地形時間地図」(通称:逃げ地図)は日建設計の有志(日建設計ボランティア部)がはじめた、「地域住民への聞き取りから設定した安全な地区へ移動するための逃げ道に所要時間の情報を色分けし、地図上に避難に関わる時間情報を可視化させる」試みで、見聞きされた方も多いかと思います。

SimTreadの研究メンバーも、早くからこの考え方に共鳴し、より精緻に、あるいは定量的に避難の状況を検証するなど、コンピューターシミュレーションという側面で逃げ地図の可能性を広げる活動に加わっています。具体的には、効果的な表現ができるようにプログラムを進化させることから始まり、そして、ついにSimTread上で逃げ地図を描くことが可能になりました。

ここでは、2012年3月に開催されたイベント「避難 地形 時間 地図 〜縮退時代における都市の記述法(ノーテーション)へ」のために作成した動画表現と、新しく搭載された逃げ地図の描画方法を紹介します。

SimTreadによる逃げ地図動画

イベントでは、背景や、グラフの地が黒い動画を作成しました。このような動画を作る方法を説明します。

計算の設定は従来通りです。ここでは、道路や建物を歩行領域として、避難ポイントを目的地としました。また、流動係数測定ライン、流動係数測定グラフも配置しています。

歩行領域は動画では白く表示されますが、ここでは紺色で表示したいので、紺色の図形を上に置きました。また、川や海岸線の輪郭には、白い線をおいています。このように、色をつけたい部分に一般図形を重ねることで、より自由な表現が可能になります。

グラフと、動画の下のカウンター文字が黒で、軸や文字が白となっているので、解析条件の設定で指定します。解析の設定で、「グラフ」タブを選択し、グラフの地の色を黒に、軸の色を白に設定します。

「カウンター」タブを選択し、カウンター欄の地の色を黒に、軸の色を白に設定します。

こうして解析を実行すると、黒バックの動画が作成されます。


SimTreadによる逃げ地図の作図

SimTreadで逃げ地図を描画するには、ポテンシャルマップの表示機能を使います。

動画の場合と同様、道路や建物を歩行領域として、避難ポイントを目的地とします。歩行領域、目的地などの配置を行ったら、解析を実行します。このとき、ポテンシャルを出力するオプションのチェックを忘れないでください。

範囲が大きい場合は、ポテンシャルマップを分割して描画させるために、領域を分割する形で四角形をいくつか配置しておきます。

解析が終了したら、ポテンシャルマップを表示します。領域を分割する四角形をひとつ選び、ポテンシャルマップを表示コマンドを実行します。目的地番号は避難ポイントのもの(例では1番)を選択し、カラーパターンは8色を選びます。また、グラデーションの幅を1032000(128m×8=1032m=1032000mm)とします。

この操作を前項で用意した四角形全てについて繰り返すと、全体の逃げ地図ができます。

最後に、余分な部分を削除して完成です。ポテンシャルマップはグリッド上に並んだ四角形がグループ化されています。グループに入って、余分なものを削除すれば完成です。

  • 図形が多くて操作がしづらい場合は、領域を分割した状態でファイルを複製保存し、分割の四角形だけ残して以降の作業を進めるとよいです。
  • ポテンシャルマップは、いったん画像ファイル(PNGがよいです)として取り出し、ポテンシャルマップを削除したあとに、この画像ファイルを再度取り込んで表現すると、データ容量が少なくてすみます。

機能紹介

SimTreadのワークフローはとても簡単。Vectorworks上で図面を作成した後に[障害物の設定]、[人の配置]、[目的地の設定]の3ステップを行うだけです。

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