JDNレポート Vectorworks活用事例

株式会社DRAFT
山下泰樹

JDN「ジャパンデザインネット」2017年12月26日掲載

JDNレポート Vectorworks活用事例

株式会社DRAFT
山下泰樹

ソニーミュージックエンターテインメント、KDDI、アダストリアなど有名企業のオフィスから、ZoffやEARTHなどさまざまな店舗の意匠設計を行う株式会社DRAFT。
斬新な空間デザインを次々に生み出し続ける同社は、代表の山下泰樹さんが、独学でインテリア・建築を学びながら2008年に立ち上げた会社だ。当時はまだニッチな分野だったオフィスデザインを軸に活動を開始し、現在ではショップ、商業施設などの依頼も多数。さらには独自の家具ブランドも展開するなど、活動の場は広がるばかり。DRAFTが近年手がけた空間デザインの事例をもとに、コンセプトワークやデザインへのこだわり、Vectorworksの活用状況をうかがった。

緻密なコンセプトワークから生まれるオリジナリティ-

楽しそうな“裏庭”を覗きたくなる『STYLE & PLAY GREAT YARD 表参道』

数々の空間デザインを手がけ、そのユニークな表現手法に話題が集まっているDRAFT。 2017年3月にオープンした『STYLE & PLAY GREAT YARD 表参道』のディレクションも、彼らの手によるものだ。

『STYLE & PLAY GREAT YARD 表参道』という、新しいスポーツファッションを提案するストリートブランドの立ち上げに伴って、空間デザインを中心とするブランドディレクションを担当しました。

STYLE & PLAY GREAT YARD 表参道

ブランド名に入っている「STYLE」と「PLAY」はそれぞれ、ファッションとスポーツを連想させる言葉。「GREAT YARD」は裏庭という意味があります。気のおけない仲間同士が、友達の家の裏庭で遊んでいる。ご近所さんなので、服装も頑張って着飾っているわけではなく、ほぼ普段着で……。そんな空気感のあるブランドを目指しました。

ファサード(建物正面)には、“裏庭”を取り囲む木々や塀をイメージして、抽象的な黒いオブジェを配置。遠くからでも一見で『STYLE & PLAY GREAT YARD』だとわかるキャッチーな造形が必要だと思ったので、力強い印象を残す大胆なデザインにしました。外壁をガラス張りにしたのは、裏庭からこぼれる光や楽しそうな人の気配、空間の賑わいを、表にいる人にも感じ取ってもらえるようにしたかったからです。障害物の隙間から裏庭がちらちら見えて、なんだかとても気になるような、「中をのぞいてみたい」「仲間に入りたい」と思わせたいと考えたんです。

大きくて印象的なデザインの外観に対し、店内はあえて引き算してスッキリとさせています。極限までシンプルにして、「ブランドのもつ誇りや自信」を表現しました。内装は木材とコンクリートを中心に、色味も白しか使っていません。

店内いちばんのアイキャッチとなる中央の吹き抜け部分には、メインのウィンドウを設置。スポーツとファッションの新しいカルチャーを打ち出していくという強い意志を表現したくて、ウィンドウを上下左右、四方から発光させてインパクトを与えました。

また、2階にも同じ位置に同様のウィンドウがあるのですが、吹き抜けなので1階からも部分的にちょっと見えるんですね。「2階はどうなっているんだろう?」と、上階へのワクワク感を高める仕掛けになっています。

1階内観。左手にあるのが店内のメインウィンドウ

クライアントと最後まで議論したのは、商品をわざと飾れないような設計にしたことです。例えば、ジャケットやコートなどを吊るす造り付けの高さを2400mmにしたのですが、これは上下2段に仕切って掛けられないギリギリの寸法だからなんです。

もちろん、天井までの高さはあるので、棚をもっと高くして、展示する商品数を増やすことは可能でした。でも、そうすると「商品を買ってほしい」というショップ側の欲ばかりが見えてしまい、ブランドのイメージがどんどんチープになってしまうんですよ。「結局、このブランドは何を提案しているの?」ということになってしまうし、世界観も表現できなくなってしまう。クライアントには「たくさんの商品で世界観が隠れないようにしましょう」と説得し、あえてショップ側が「足し算」しようと思ってもできない設計にしています。

図面はすべてVectorworksでつくっていますが、マテリアルをきれいに表現できるところが気に入っています。例えば、ガラスの部分はグラデーションをかけて光が反射している感じを表現したり、塗装の色や質感を技術的に描き分けたり……。さまざまな表現ができるので、プレゼンテーションのときもクライアントにイメージを伝えやすいですね。さらに、施工サイドからも好評です。図面をぱっと見るだけで素材がわかるので、現場で混乱することがありませんから、プロジェクトがスムーズに進みます。

棚の図面

歴史あるランドマークに新たな価値を創造『大阪国際ビルディング』

緻密なコンセプトワークに基づく、説得力のあるデザイン。そして何より、既成概念にとらわれない自由な発想が、DRAFTのデザイン価値を高めている。次に紹介する事例は、2016年に手がけた『大阪国際ビルディング』のリニューアルプロジェクトだ。

『大阪国際ビルディング』が建てられたのは、1973年。大阪初の超高層ビルという触れ込みで注目を集めた、古くから親しまれているランドマーク的存在の建物です。DRAFTはそのリニューアルプロジェクトに参画し、エントランス、1階外装のほか、ロゴマークや案内表示のデザインを一新しました。

このプロジェクトでは、まず、リニューアルの方向性を「建築」と「環境」の2軸で考えました。「建築」の観点でポイントとなるのは、40年以上にわたって大阪を象徴するランドマークだったこと。そして、40年以上前に建てられたのにも関わらずモダンなデザインであることでした。

大阪国際ビルディング エントランス

次に「環境」の観点から考えると、築40年も経てば建て替えるのが一般的ですが、スクラップ&ビルドの時代は完全に過去のものになっています。そこで、大阪国際ビルディングは「既存建築物と自然との共存」という次の時代にもふさわしい価値が備わったものにしようと考えました。

そんなことからリニューアルのコンセプトには、「経年との共生」と「自然との共生」のふたつを掲げました。時代に流されることなく、経年との共生も、自然との共生もできる。そんな新しいタイプのビルが、これからのランドマークになるのではないかという発想です。

既存のモダンな建築美を活かすために、改修はエントランスと1階外装のみに留めました。天然木材を多用した狙いは、時間経過とともに風格が増していく視覚的な効果に加えて、エコロジーの観点からの新提案という側面もあります。一般的には木材を使うと「森林伐採は自然破壊だ」というイメージがありますが、真逆の発想をして「木を使ってエコ」と考えたわけです。

新しいロゴマークも作成。リニューアルしても変わらないビルの外観をビジュアル化することで、42年の歴史を形にし、新しく生まれ変わるビルのシンボルとして機能する

さらに自由に、ジャンルの垣根を超えて。Vectorworksとともに歩んだ10年間。

インテリアデザインや建築など、発想の起点は独学で学んだ経験から

実は、Vectorworksは2008年にDRAFTを立ち上げたときから使っています。僕らの仕事は意匠設計なので、「こういう企画をやりたい!」と思いついてからすぐに、ぱぱっと遊びながらアイデアスケッチが描けるようなツールがベスト。直感的に使えて、なおかつ当時から慣れ親しんでいたIllustratorやPhotoshopと感覚が似ているのもポイントでした。図面を描くというよりも、絵を描くというイメージなんですよね。特に、曲線を描くときには、すごくリズミカルに作業が進む感じがします。

大阪国際ビルディング 外観

ラッキーなことに最初に出会ったCADソフトがVectorworksで、使ってみたら感覚的にストレスがなかった。非常に気に入って、導入した当時は、3Dも全部Vectorworksでつくっていたくらいですから(笑)。今では、3DモデリングにはSketchUp、レンダリングにはV-Rayというソフトを使っているものの、図面はずっとVectorworks。そのくらい密に使っているソフトですね。

Vectorworksもそうですが、インテリアや建築もすべて独学で学びました。昔からマニアックな性格で、わからないことを自分なりに調べながらコツコツやるのが好きなんですよ(笑)。でも、それがすごくよかったと思っています。発想が、造形的な美しさを追求したいという以上に、「意志」を感じるオリジナルデザインを生み出したいというところにあるのは、独学だったことに影響している気がしています。

そもそも、なぜDRAFTを立ち上げたかというと、当時あまり日本に普及していなかった「オフィス空間のデザイン」を掘り下げてみたかったからです。非常にニッチな分野でしたが、職場は多くの人が長い時間を過ごす場所です。だからこそ、デザインの力で快適になったらいいのに……とずっと思っていました。

「デザイン的に考えた働く環境」をあれこれ提案していくうちに、多くの企業が「働き方改革」を推進するようになって。その流れに乗ったこともあり、2~3人ではじめた会社も、10人、20人……と増えて、現在は100人を超える大所帯になりました。自分たちができることを愚直に積み重ねていったら、いつの間にか大きくなっていたという感じですね。

働く環境を変えたいという思いから、最初はオフィスデザインという領域を突き詰めていきましたが、それだけにこだわり続けようとは思っていませんでした。ショップや商業施設などでも、インテリアデザインでまだまだやれることはあるなという感覚は強く持っていましたから。インテリアだけでなく、建築だけでなく、プロダクトだけではなく、もっと大きなイメージで意匠設計を捉えて、ジャンルにこだわらずに空間デザインの可能性を広げていきたいですね。これからも、どんどんジャンルにとらわれない自由な会社になっていくと思います(笑)。

大阪国際ビルディング 内装図面

ジャンルを限定しないニュートラルな視点『DRAFT 東京オフィス』

山下さんの言葉どおり、DRAFTはインテリアデザインの枠を大きく超え、企業のブランディング、広告戦略、マーケティングなど、さまざまな挑戦を続けている。その躍進ぶりは留まることを知らず、2016年10月には規模拡大にともない表参道にオフィスを移転した。そのデザインも、もちろん同社で手がけている。

自社オフィスのデザインは、新しいブランディングを打ち出すという意味でも重要です。クライアントから「オフィスデザインって、ここまでできるんだ」と思ってもらえることも狙いました。

株式会社DRAFT オフィス内観

特定のイメージに縛られたくないので、あくまでも自由に。「オフィスだから、こうじゃなきゃいけない」という考えは一切排除し、ジャンルや素材感を統一させずにブランディングしました。遊びの要素ばかりに見えるかもしれませんが、実は、機能もしっかりしています。それでいて、新しい働き方ができるという提案にも挑戦しました。

フロア計画のポイントは、お客様にオフィスの奥まで入ってもらって、社員の働く姿をたくさん見てもらうこと。このオフィスでの働きかたや、社内の活気を感じてもらおうというのが狙いです。

通常なら、エントランスを入ったらすぐ会議室があって、その奥がワークスペースというレイアウトにすると思いますが、DRAFTの場合は真逆です。エントランスを入ってすぐに目にするのは、ガラス張りのワークスペース。ここはフリーアドレスになっているので、常に人の動きを感じられます。

表参道に面したビルの2~3階を使ったオフィス。無機質なコンクリート、木材、クラシカルなタイルといった質感の違う素材を組み合わせ、ジャンルにとらわれない自由な会社であることを表現した。
2階 図面

窓際にはソファやカウンターもあって、そこでも社員が仕事をしていたり、打ち合わせをしていたり。突き当たりにはカフェカウンターもあって、ひと息つける。ひとりのワーカーにさまざまな居場所があって、気分や作業内容によって自由にワークスタイルを選べる仕掛けを取り入れています。

実は、社内にあるオフィス家具は、DRAFTが新たに立ち上げたブランド「201°(にひゃくいちど)」のプロダクトです。

2階ワークスペース
光が差し込む窓際のソファとカウンタースペース

「こんなものがあったら面白い」を追求、オフィス家具の新ブランド『201°』

2017年に立ち上げた、オフィス家具の新ブランド「201°」。自分たちが「こんな家具があったら面白いよね」と思えるものを追究し、形にした結果だ。

商業的に成功したといえるのは、多くの人に受け入れられる商品。一般的な家具メーカーは、多くの人に受ける使いやすい家具を商品化しているように思います。でもDRAFTは、90%の人に嫌われてもいいから、残りの10%の人に絶対的に必要とされるニッチなニーズに挑戦していきたいと思っています。

そこで立ち上げたのが、「201°」というオフィス家具の新ブランドです。人間の平均的な視界はおよそ200°と言われているけれど、たった1°視野を広げるだけで新しいものが生まれるんじゃないか――そんな思いを込めて名づけました。「自由に働く」をキーワードに、自然にコミュニケーションが広がるようにデザインしています。

例えば、LTLというシリーズは、気軽に人が集まりやすくするために、角のない丸いフォルムにしました。コミュニケーションを密にしたいので、背もたれを頭より高くして半個室のような状態になるのが特徴です。

一方、コミュニケーションが加速すると集中する場所が少なくなるので、個人個人が黙々と作業するための閉鎖的なスペースも必要になります。そんなときのための、音や視界を遮って“籠る”プロダクトもあります。

「201°」シリーズ例

これらは、空間をデザインするなかで自然発生的に生まれたもの。今後も、「こんなものがあったら面白いな」と思うことは、どんどん形にしていきたいと考えています。デザインに対するいろんな制約を取り除いて、もっともっと自由になりたいんです。あくまで目指すのはオリジナル。今までになかった新しいデザインは、自由な発想からしか生まれないと思っています。

山下泰樹(やました・たいじゅ)

インテリアデザイナー/株式会社ドラフト代表。1981年生まれ、東京都出身。26歳のときに独立、株式会社ドラフトを立ち上げる。オフィスデザインの分野で活動を開始し、現在では大手企業のオフィスデザインをはじめ、有名アパレルブランドのショップデザイン、商業施設の環境デザインなど活躍の場を拡げている。これまでにLiveable Office Award(香港)、INSIDE Award(ドイツ)、A’Design Award(イタリア)など国内外で数多くのデザインアワードを受賞。桑沢デザイン研究所非常勤講師。

  • 構成・文:佐藤理子(Playce) 撮影:木村周平
  • この事例はJDNの許可により「ジャパンデザインネット」で2017年12月26日より掲載された記事をもとに編集したものです。
  • 記載されている会社名及び商品名などは該当する各社の商標または登録商標です。 製品の仕様は予告なく変更することがあります。

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