ユーザ事例 & スペシャルレポート

安田女子大学 家政学部 生活デザイン学科は、衣・食・住・健康・環境の領域について、専門的に特定の分野を学ぶ、あるいは分野横断的に複数の分野を学ぶ、など自由度の高いカリキュラムとなっています。

今回、住分野を主に専攻している学生を対象に、Vectorworksでインテリアの3DCG(内観パース)とデザインチェアのモデリングを行い、さらにモデリングしたデザインチェアを3Dプリンターで出力する特別授業を実施しました。どのような授業が行われたのかご紹介すると共に、Vectorworksの授業を担当されている山田 俊亮(やまだ しゅんすけ)先生にお話をうかがいました。


〜1、2時限目 Vectorworks特別授業〜

-Vectorworksと3Dプリンターの説明-

最初に、Vectorworksは建築・インテリア・プロダクト・機械・舞台美術・照明・音響・造園など幅広い分野で利用されていることを紹介しました。2次元作図だけでなく3Dモデリングやレンダリング、ワークシートなどの機能についても大まかに説明し、授業で行う3DCG(内観パース)でのレンダリングとデザインチェアの3Dモデリングについて簡単に紹介しました。さらに、Vectorworksでの3Dモデリングから3Dプリンターでの出力までの流れを解説する中で、3Dプリンターの種類や出力のためのファイル形式についても触れて実際の操作に入りました。

-デザインチェアのモデリング-

1時限目は用意された図形を使って3Dプリンターで出力するデザインチェアのモデリングです。座面と背もたれの部分は、多角形でアウトラインをとった図形をフィレット処理やNURBS変換、複製や伸縮、ミラー反転ツールや3Dツールセットパレットの多段曲面ツールを使って作成しました。さらに、2Dで自由にデザインした図形を投影ツールで背もたれ部分に投影し、OpenGLレンダリングをして一人ひとり違った配色と背面デザインのデザインチェアを完成させました。そして、3Dプリンターの一般的なファイル形式であるSTLと3DSでの取り出しも体験しました。椅子の脚も用意された図形を使って作成しモデリングは終了しました。

-インテリアパース作成-

2時限目は、用意されたファイルを使って3Dの空間を作成しテクスチャの割り当てと光源設定、さらにプレゼンテーションボードの作成を行いました。3Dの空間は四角形ツールから柱を、壁ツールで壁を作成しました。また、建物ツールセットのドアツールと窓ツールでドアと窓の設定を行い、最後に床を作成して3Dモデルを完成させました。次に、登録画面に用意された家具配置を呼び出して、家具や床、壁にリソースブラウザパレットから各自思い思いにテクスチャの割り当てをして空間を完成させました。さらに、ビジュアライズツールパレットの光源ツールで平行光源と点光源の設定を行い、カスタムRW屋内仕上げレンダリングで内観パースを仕上げました。最後に作成した空間のプレゼンテーションボードを完成させて作業を終了しました。

-3Dプリントについての説明-

2時限目の最後には、3Dプリンターのある教室に移動して、造形デザイン学科の濵本 隆氏より3Dプリントについて解説がなされました。デザインチェアの出力を行う石膏の3Dプリンターについて、造形手法や出力に要する時間、材料費や造形した後の処理について説明を受けました。その他、石膏以外で造形する3Dプリンターやレーザー加工機、UVプリンターなど教室内にある導入されたばかりの先端的なデジタル機器についても説明がなされました。授業時間内には出力が完了しないため、全員のデザインチェアがデザインした通りに出力できることを祈りつつ、今回の特別授業は終了しました。

生活デザイン学科 助教 山田俊亮(やまだ しゅんすけ)先生にお話をうかがいました。

-生活デザイン学科での製図やCAD授業はどのようなカリキュラムですか?-

生活デザイン学科は、1年生で衣・食・住・健康・環境の分野を総合的に学び、2年生以降はひとつの分野を専門的に学ぶことも多分野を横断的に学ぶこともできる自由度の高い履修スタイルが特徴の学科です。住分野の設計製図は1年生の後期から始まる設計製図Ⅰから半期ごとに3年生後期の設計製図Ⅴまで選択授業があります。CADについては、週1回1コマ(90分)の選択授業が3年生前期(建築CADⅠ)と後期(建築CADⅡ)にあります。基本的に設計製図の授業はすべて手描きで行っていて、CADは授業で身につけて自主的な作品制作などで更なる研鑽を積んでもらうようにしています。

-CADの授業内容は?-

CAD授業ではVectorworksを主に教えていますが、授業の中でインテリアや建築のプレゼンテーションについても学びます。建築CADⅠでは2次元のCAD製図を学び、木造平面図のトレースやRC造の平面、立面、断面図の製図とプレゼンテーション資料の作成を行います。建築CADⅡでは、3Dモデリングとレンダリングを学び、自分で設計した設計課題をCAD化してプレゼンテーションボードにまとめるなどを行います。

-特別授業のねらいは?-

CADの授業を履修しているのは主に住分野を専攻している学生ですが、進路は建築分野だけでなくインテリアの分野も含まれます。CADの授業だけでは最新のソフトウエアを用いたレンダリングなどが足りないと感じていましたので、その部分を補うねらいがありました。今回の授業では建築CADⅡまで履修した4年生を対象にして、最新のVectorworksでインテリアの3DCG(内観のパース)のレンダリングを行い、よりリアルな空間表現に触れて欲しいと考えました。さらに、今年度から造形デザイン学科が新設され、3Dプリンターなど最新のデジタル機器が大学に導入されましたので、デザインから3Dモデリングそして3Dプリンターでの出力までを通じたデザインを身につけて欲しいと考えました。

-特別授業の感想は?-

私自身Vectorworksは以前から活用していますが、専門が建築構造ということもあってインテリアデザインに焦点をあてた今回の授業は大変参考になりました。インテリアの分野を目指す学生は多いので、内観パースのレンダリングや椅子などプロダクトのモデリングから出力までを経験してもらうことができて良かったです。特に、自由にデザインをする場面や思い思いのテクスチャを割り当てる場面では生き生きと操作していて学生も楽しかったのだろうと思います。今後、CAD授業の中に今回の特別授業のような内容も盛り込んでいきたいです。

-今後取り組みたいことは?-

今年の夏に、生活デザイン学科、造形デザイン学科、書道学科の3学科で作品をつくって展示する合同展示の企画があり、学科間でコラボレーションしながら作品をつくる機会もあります。今回の授業も、造形デザイン学科に協力していただいたことで実現できました。ですから、今後も学科間でうまく連携しながら、生活デザイン学科の学生にも3Dプリンターなど最先端のデジタル技術を通じたデザインを行う機会も積極的につくっていきたいと考えています。また、私は歴史的建造物の保存、修復を主に研究しています。その分野でも3Dプリンターや3Dスキャニングなどを活用した研究やプロジェクトを行っていますので、学生にはそういった研究にも参加する機会をつくっていきたいと考えています。


ー取材を終えてー

特別授業では、素直に感動を表現し、お互いを思いやりながら作業を進めている学生の姿が印象的でした。そして、楽しそうにデザインしている姿は本当に幸せそうで心が和みました。一人ひとり違う椅子の配色と背面のデザインからは素直さとやさしさが伝わってきて、幸せな気持ちでデザインすることの大切さを改めて考えさせられました。

エーアンドエー株式会社 カスタマー・リレーション課 竹内 真紀子

【取材協力】

安田女子大学 http://www.yasuda-u.ac.jp/

家政学部 生活デザイン学科 助教 山田 俊亮 氏

家政学部 造形デザイン学科 主務 濵本 隆 氏

(取材:2016年6月)

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