ユーザ事例 & スペシャルレポート

建築・インテリア設計で高いシェアを持つ2D/ 3D汎用CADソフト「Vectorworks(ベクターワークス)」。優れた拡張性を備え、多彩な機能を持つ同ソフトは、店舗・インテリア設計の現場ではどのように生かされているのだろうか。

タカラスペースデザインは、理美容サロン、クリニックなどに対し、設計・施工を中心に、開業準備、マーケティング、経営などトータルでサポートする企業だ。同社にVectorworksの活用ぶりを聞く。


インテリアデザイナーに聞く Vectorworks活用レポート

同社のデザイナーとして、設計を手掛ける湯口巌氏。「onde(オンド)」は、浜松市郊外に新規開業したヘアサロンだ。「自分の過去の仕事を見て指名していただいたので、空間に関してはお客様の要望というよりも、その立地や物件の良さを引き出すようにしました」と湯口氏。ところが、既存の建物は16坪強の住宅然としたもの。「立地はその2階だったので、階段を上がった時にその印象が変わるよう努めました」。視線の操作を強く意識して、座った客の目が行きやすい開口部まわりや天井を極力整理し、ふかした壁や天井に設備類を巧みに隠している。同時にそれらが室内や窓外の風景を切り取るフレームとなっているわけだ。

「学生の頃から使っていたので、Vectorworks(当時はMiniCAD)には慣れていますね」。新入社員にも経験者が多く、設計時に情報をシェアしやすいという。同社には96名の設計担当が在籍、デザイナー三人に一人の割合でCADオペレーターがつくチーム編成だ。

「全国に支店や営業所があるので、社内には工務部・企画設計部という部署があり、そこで施工図の標準化を進めていて、詳細な規格を定めています。大規模に展開されているチェーンサロンや、あるいは開業後のメンテナンスなどもありますので、誰でも図面を見たり、触ったりできるような共有化がなされています」。特にクライアントに見せることを想定して、わかりやすさを重視し、着色を多用した図面になっているという。Vectorworksの貼り込み機能の自由度が生かされているようだ。また同社は、理美容・医療関連の機器製造の最大手、タカラベルモントのグループ会社であることから、常に最新機器のCADデータもVectorworksで共有している。

湯口氏によるシンプルな空間は、単に線を省くだけではなく、詳細寸法を追い込んで検討を重ねることで生まれる。線一本の違いで積み上げたデザインが破綻してしまうため、アウトプットに徹底したこだわりを持つデザイナーが主体的に使う上でも、Vectorworksの汎用性の高さが利いていると言えよう。今後、更にどのように活用していきたいかという問いには、「シンプルに作業を進めるという点で、Vectorworksという一つのソフト上で3Dにそのまま変換できることに可能性を感じます」と湯口氏は話す。

商店建築 2013年5月号掲載)

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