ユーザ事例 & スペシャルレポート

EVOLVE ”〜 進化 〜”をテーマに開催した「Vectorworks 2013新製品発表会 全国キャラバン」にて講演していただいた内容をご紹介します。


震災発生から...

2011年3月11日に大震災発生。自分も何をしたら良いか全く分からない中、4月13日に友人を誘い二人で沿岸を見て廻りました。その時に見た被災地の様子は想像以上で、今でもその衝撃を忘れることができません。

その中、2009年に盛岡近郊の焼肉店の設計をさせていただいたオーナーから連絡があり、「大船渡で店舗を流され場所を移して営業したい人がいる」とのことで、この設計の仕事を受けたことを切っ掛けに、約半年の間で、南の大船渡から北の大槌町まで、計10店舗の設計プロジェクトを担当することになりました。と同時に、片道100kmを超える道のりを往復する毎日が続きました。

依頼者や現場の職人とは、コミュニケーションを良く取ることを心がけていましたが、私一人ではもちろん限界があります。現地では人手が全く足りないことや、何度も打合せができない状況の中、分かり易いパースや現場への細かな説明を添えた施工図など、効率化やスピードを上げるための工夫が必要でした。もちろん、その仕事を支えたツールの一つが"Vectorworks"であり、なくてはならない存在でした。



人の添景を入れ一工夫

立面や断面といった図面(施工図面含む)を描く際、 私の場合は、必ず「人」の添景を入れるようにしています。何故かというと、描いている私自身がスケールを再認識できる点、それによって物の大きさや納まりに問題がないかの早期発見ができる点から「人」を図面に入れています。現場にとって一見不要な情報のように写りますが、私の経験上、実は職人さんにとっても、これから作るものの大きさや納まりが一目で分かるといったメリットがあります。私は、このような手法で自分に対しても現場に対しても、図面の見せ方に一工夫して仕事の効率化を図っています。

実はこの方法、8年ほど前に受講したVectorworksセミナーで、講演をされていた青山哲夫さんの表現方法です。当時、とても驚き感銘を受けたことが記憶に残っています。以来、私の描く図面には、空間の比較対象となる「人」が入るようになりました。

想いを伝えるための道具 Vectorworks

Vectorworksは、想いを伝えるための道具であり、それは依頼者に対しても現場の職人に対してもです。依頼者は図面を読み解くことや、その図面から、これからでき上がる店舗を想像することは難しいことです。そこでパースが必要になるのですが、Vectorworksはもちろん3Dが可能で、簡単な操作でパースを仕上げていくことができます。これによって、依頼者との意思疎通が図れますし、私の設計の意図も伝えることができます。逆に現場の職人には、パースの絵だけあっても何も作れません。その場合、図面が必要になる訳ですが、その作成はもちろんVectorworksです。得意とするところですね。(笑)

私は1枚の図面に、自分が必要と思う情報をなるべく多く描き入れます。もちろん、多すぎず少なすぎずといったバランスが必要です。先に述べたように「人」も描き加えます。これによって、私と依頼者で合意された"かたち(想い)"を現場にも伝えていきます。私にとってのVectorworksは、依頼者、私、現場の職人とをつなぐ役割を担っています。以前は、VectorWorks12.5を使用していました。再建プロジェクトが重なってしまったこともあり、新しくなったVectorworks、特に3Dの機能を使いこなしていませんでした。時間との勝負でしたので、ついつい今まで通りの使い方をしていたところもあります。最近、改めてVectorworksの3D機能を試していますが、本当に良くなっていますね!あの時にこれらの機能を知っていたら、設計の仕事は少しは楽になっていたかも知れませんし、伝えるために苦労していたことが、Vectorworksだけで完結したかもしれません。

あの頃の笑顔をもう一度!

私は店舗設計業のかたわら、趣味で岩手のクラシックカー愛好家クラブの会長もしています。かつて、この沿岸一帯は、住宅や店舗が建ち並んでいました。クラシックカーで走ったときには、手を振り声援してくれた街のみなさんの顔が今でも忘れられません。私はその様子が写る写真を見ながら、今は何もかもなくなってしまった市街地に、あの時の風景を重ね、もう一度、元気で活気ある街を取り戻せたらと思っています。

私のできることの一つとして店舗設計がありますが、店舗再開を望む方々の想いをかたちにしていき、元気な町並みを取り戻す助けができたのなら嬉しく思います。その設計のためにはVectorworksは欠かすことができません。私は、Vectorworksを道具に、依頼者の想いを"かたち"にしていきたいと考えます。

【講演者情報】

有限会社テックアート デザインオフィス http://www.tech-art.jp/

宮野 利行 氏

Vectorworks2013新製品発表会 全国キャラバン仙台(2013.1.21)

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