ユーザ事例 & スペシャルレポート

「Vectorworks2012 全国縦断 新製品発表キャラバン」にて講演していただいた内容をご紹介します。


変わりゆくCAD教育

私は、Vectorworksを学ぶ初心者の方や学生さん向けに技術習得の為の書籍を何冊か執筆させていただいております。数年前までは、線の描き方から始まり、2次元から簡単な3次元が作図できる程度の内容でした。

しかし、昨今のVectorworksや他のCADソフトでもBIMという言葉と共に3次元が主流となり、教育界の中でも3次元設計を主体にした説明が必要となってきました。そもそもCADとは何かと考えると、「図面を手で描く代わりにPCで描くこと」と言う人が多いのではないでしょうか。決して間違いではないのですが、世界の潮流を見ますと、もはやCADというのはこのような考えをする時代はとうに過ぎていると思います。

『図面』ってなんでしょう?

平安時代では建物を建てる際、大工が小さく精巧な模型「雛型」を作り、その模型に対して何倍かの大きさの部品を作り雛形を参考に建物作りをしていたとされています。また建物をどこに建てるか指示する為に配置図「指図」が図面の始まりと言われています。模型は常に持って歩くわけに行かなかったため、持ち運びが便利で軽くて、3次元を作る為の情報を共有するために、人間の素晴らしい叡智で図学(製図学)が発展し、今日の製図に結びついています。

コンピュータが普及し、2次元で作ったものを完成系型の模型にかわるC.Gや、効率的な図面作成や複雑な演算処理をさせる技術としてさまざまなソフトウェアが開発されてきました。近年では、BIM(Building Information Modeling)やAlgorithmic Designが注目され、昔ながらの青焼き等の2D図面からコンピュータ上で作成した3次元モデルをそのまま3Dプリンターで模型を作る技術へと進化しています。

3次元で考える3種の図面

「考える図面」

一般的に、エスキス・クロッキー・スケッチなど呼び名はさまざまですが、基礎造形部分を示します。3次元の図形を頭の中で組み立てる事は相当訓練が必要だと思います。コンピュータで3次元の基礎造形訓練を積み重ねる事により、思ったものを3次元化する事や、偶発的にきれいな形態を生み出す事ができます。何を作るかではなく何となくできた造形物の中からヒントを得て新たなアイディアを生み出す事もできます。図面とは2次元の平面図や立面図だけではなく、3次元の透視図という表現もあります。

「みせる図面」

建物を建てる前のプレゼン図面や、でき上がった後の作品等を示します。Vectorworksは汎用CADソフトとされ、建築、土木、機械、舞台、プロダクト向けとされていますが、実際にはフォトレタッチソフトやイラストレーションソフトに近い機能が搭載されています。コンペや施主にプレゼンする資料としての図面作り、平面図、立面図、断面図、パースに、写真や文字を入れこんだグラフィカルな表現がVectorworks上でできるようになっています。ここでもやはりプレゼン用の3次元のC.Gや実際の写真(3次元)での表現が説得力を持ちます。

「つくる図面」

基本設計を含め実施設計の図面を示します。
平面詳細図や矩計図は、壁の表現として細かい線を描いていくため一番手間のかかる図面と言われております。その作図を助けてくれるのが壁ツールのスタイル設定です。一度壁の仕様を設定してしまえば数クリックでいつでも複雑な壁が作図できます。また、そこにドア・窓ツールを使用する事で壁ツールがどれだけ有用かわかります。情報の伝達はものづくりにおいて音声情報よりも視覚情報が伝達しやすく、さらに視覚情報の中でも2次元情報よりも3次元情報がもの(3次元)を把握しやすくなるといえます。施工図においても3次元での表現は現場で情報伝達の理解度が上がります。

3次元で見えるのがもともと自然である

たとえば、2次元情報だけを頭の中で組み立て3次元にする場合、複雑な建物を造ると立面図等を間違えてしまう場合があります。BIMでは、3次元から2次元情報を取り出すため間違いのない正確な図面が作成でき、作業を効率化できます。また、実際の建物を建てる前にコンピュータ上の3次元モデルでさまざまなシミュレーションができます。仮想空間のなかで検討を繰り返せば繰り返すほど、実際の施工のときにスピーディーに全く問題の無いものを最短で作る事も可能になります。

最先端のデザイン「 Algorithmic Design」

アルゴリズミックデザインとは建築用語ではなく、コンピュータを使用して問題を解く為の効率的手順による形態デザインのことです。北京オリンピックのスタジアムや台北のオペラハウスはアルゴリズムを利用して建物がデザインされています。Vectorworksでも、「Growing Object:イクケイ(育形)」プログラムでシンプルな設定ダイアログから手軽にAlgorithmic Designを体験できます。Vectorworksは、図面を描く為のツールだけでなくスケッチを飛び越えたアートの領域の作図も可能です。

短時間でも作図が可能なツールが搭載

Vectorworksには、基礎デザインや 実施設計で有効的な『壁ツール』『ハイブリットシンボル』『ビューポート』機能が搭載されています。壁ツールは、あらかじめ壁の厚みと壁の高さを入力する事で2次元作図と同時に3次元作図ができ、独自の壁のスタイルも簡単に作成できるため、あらゆるケースに対応できます。

作図方法としては、四角形から壁を生成し、壁から屋根を生成する事で3次元モデルを作成でき、投影図ビューポートを使う事で東西南北の立面図を3次元モデルから自動作成する事ができます。設計には変更がつきものですが、手書きの場合は設計変更が起きた際には図面を1つ1つ書き直すため相当な作業量でした。Vectorworksでは、作成した2次元、3次元情報は連動しているため、3次元モデルに変更を加えれば更新ボタンを押すだけで、2次元情報全てに変更が反映されます。

CADを使う利点

図面を描く際に、「速く」・「使いやすく」・「効率良く」あることが、コンピュータを使うメリットだと思います。それを使うかどうかは使い手の問題で、手書きでゆっくり考えながら描きたい人は手書きで行えば良いと思います。CADは道具としてすばらしいものです。その中でBIMはコンピュータを使用した設計として理想的な方法だと思います。しかしながらCADは方法であって結果ではありません。どのような方法で図面を描こうとも結果が重要なことだと言うことを忘れてはいけないと思います。

【講演者情報】

一級建築士事務所インターコア http://www.i-core.jp/

福田一志 氏

Vectorworks2012 全国縦断 新製品発表キャラバン(2012年3月)

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