ユーザ事例 & スペシャルレポート

専門学校ICSカレッジオブアーツは、インテリアデザインという用語がまだ日本で一般化していない1963年に創立した日本で最初のインテリア専門校です。専門課程では、3分野で4コースが開講され、デザイン分野のインテリアアーキテクチュア&デザイン科とコーディネート分野のインテリアデコレーション科のカリキュラムはデザイン系・表現技術系・理論系の3つの系統で構成されています。今回、表現カテゴリーリーダーでインテリアアーキテクチュア&デザイン科担当の戸國義直(とくに よしなお)先生にお話をうかがいました。


-ICSカレッジオブアーツの特徴を教えてください。 -

分野ごとに特色があります。インテリアアーキテクチュア&デザイン科(以下デザイン科)は、ゼロからデザインしてかたちにすることにスタディーも含めて力を入れています。一方、インテリアデコレーション科(以下デコレーション科)は、表現する素材をきちんと伝えることが重要になりますので、CG表現やプレゼンのパネル制作、色彩表現に力を入れています。さらに、ものづくり分野のインテリアマイスタートレーニー科(以下マイスタートレーニー科)は、現場で施工できる力をつけなくてはいけないため実習を中心に、ものの構成や寸法、納まりなど詳しく教えています。また、デザイン科とデコレーション科では、学生の個性にあわせた教育が可能なチュートリアル方式(少人数制の個別指導)を導入しています。この方式は英国国立ノッティンガムトレント大学との学位提携による教育システムのひとつでもあります。

-デザイン科のCADの授業はどのようなカリキュラムになっていますか? -

デザイン科は基本的には空間のしつらえはもちろん、内装に関わる家具や雑貨、収納などすべてをデザインしてかたちにします。3年制のコースでは、1年生は2Dで基礎を修得し、2年生で3Dにレンダリングも含めて応用的な部分を修得します。そして3年生は、企業研修前と卒業制作提出前の年2回、集中授業を行って実践力を養います。表現技術系のカリキュラムとしてはCADと手描きの製図が半々です。但し、デコレーション科ではプレゼンテーションをより重視していることから、CADの授業が約7割とコースで若干違いがあります。

-CADの授業はどのような教材を使って行っていますか?-

教材は学生の状況をみながらオリジナルでつくっています。担当しているデザイン科2年生の授業は、応用力をつけるため、問題形式にしてできた時に達成感のある実践的な課題を考えています。例えば、「Vector Works Rendering(CG)」という課題では、モデルファイルとプリントしたCGを渡します。そのモデルファイルをつかって、各自視点や光源設定を行い、建具などのテクスチャマッピングをして、プリントしたCGと同じ物をつくらせます。その時々で学生に不足していることを読みとりながら問題にして、約10週で10課題に取り組ませています。CADの授業は講師によって授業の進め方や教え方には違いがありますが、目標とするべきところはコンセンサスをとって進めていく工夫をしています。

-チュートリアル方式を取り入れているのはどのような授業ですか?-

デザインの授業で取り入れています。5~8名程度のグループに先生が一人ついて、個別に面談形式で課題を進めていきます。デザインの授業は課題形式で基本的には5週間で1課題、年間約6課題提出させています。提出作品は手描きからスタートしますが、1年生の後半2課題ぐらいからVectorworksを使っています。CADの授業では、唯一ポートフォリオ制作の授業がチュートリアル方式です。学年終了時の進級審査ではこのポートフォリオが必要になりますので、学生一人ひとりの個性にあった表現ができるよう指導しています。ポートフォリオは進級審査だけでなく就職活動にもすぐに役立ちます。

-課題提出にも使っているVectorworksと他のソフトとの連係はありますか?-

Vectorworksに先立って1年生は最初にAdobeのフォトショップを学びます。模型写真と実際の写真の合成をするなどデザインの課題と連動させています。その後、Vectorworksで2Dを学びます。2年生はVectorworksで3DとRenderworksを学んだ後、Adobeのイラストレーターを学びます。基本的にはVectorworksでほとんど同じことができますが、イラストレーターでは名刺やショップカードの作成など色彩表現も含めて教えています。Vectorworksに比べてイラストレーターは操作方法がややこしい面もありますので、2年の後半で教えていますが、学ばせる時期については状況に応じて柔軟に対応しようと考えています。

-どのようなことを目標にしてVectorworksを教えていますか?-

表現手法として、手描きとCAD、模型や3Dに大きな違いはありません。自分の作品を一番良く表現できる方法を学生一人ひとりが選択すれば良いと考えています。ですから、ひとつの礎として3DやCGを教えています。また、授業のコンテンツは、3名のCAD講師がそれぞれコースの学年担任をしていますので、学生の日常的な悩みなどから生まれるものもあります。その点は、常勤講師が教えている我々の教育の強みでもあると思います。授業だけで完結するのではなく、企業研修に行った学生の声などもフィードバックしながら、実際の現場で使える応用力と実践力を身につける教育を目指しています。

-学生の声から建築・インテリア業界の変化は感じられますか? -

業界的にはまだまだアナログ的な作業が主体になっている現実があります。但し、仕事の形態が変わってコンピュータの作業が増加し、学校を出たばかりの社員も即戦力と考える会社は増えているようです。当然Vectorworksで図面直しや3Dなどができることは学生にとってメリットです。今はCGを外注する時代ではないので、CG教育により力を入れた方がよいのかもしれないと感じるところもあります。加えて、ツールとして無限の可能性を持つVectorworksが、どんどん魅力的になるのに合わせ、どの部分を使ったら作業がより効率化でき、よりよい表現が可能になるかを追求していかなくてはいけないと感じます。

-デザイン教育の中でのCADの位置づけは?-

デザインするためのツールで、デザインするためになくてはならないものだと思います。Vectorworksはとても便利です。ですが、「2年生になって自分の表現をしようと思った時に、何が必要かもう一度考えてみよう」という教育の仕方をしています。というのも、CGが必要でない場合もあるでしょうし、なんとなくつくるのではなく、必要性があるからつくるということを学生にも分かって欲しいのです。表現手法は人によってさまざまだと思います。基礎的なことがわかっていれば、どんな表現手法を用いても制約はしていません。逆に自由に考えさせることで、個性が生まれていくので、それで良いと考えています。デザイン教育では色んな個性を大事にしてあげることが、とても大切だと感じます。

-今後どのような授業を行いたいですか?-

学生が社会に出た時に実際の仕事の現場で必要となる応用力と実践力を養っていくことが我々の使命と考えていますので、基本的な授業のスタンスは今後も変わらないと思います。新しい試みとしては、Ustreamによる授業映像の録画と配信を、デザイン科2年生後期のCAD授業で実験的にやっています。90分2コマの授業で、前半で解いた問題の解説(後半90分)を録画し、一定期間見られるようにしており、学生にはかなり好評です。教育と映像のコンテンツの新しい繋がり方がみえる可能性を感じるので活用を進めたいと考えています。また、今までVectorworksはプレゼンテーションツールとして活用する考え方を強く持っていましたが、スタディーツールとしてどう活かすかということも追求していきたいです。


ー取材を終えてー

最上段最後列の中央に講師が座る斬新なCAD教室のレイアウトは、「宇宙戦艦ヤマトの司令塔みたいだね!」というある方のひと言がヒントになったそうです。立ち上がると教室全体が見渡せ、意外にも使い勝手が良いそうです。既成概念に捕われない柔軟な発想は新たなアイデアに繋がり、そのヒントは身近なところに隠されているのではと感じる取材となりました。

エーアンドエー株式会社 広報宣伝部 竹内 真紀子

【取材協力】

学校法人環境造形学園 専門学校 ICSカレッジオブアーツ http://www.ics.ac.jp/

教育部 表現カテゴリーリーダー 戸國 義直 氏

(取材:2011年1月)

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