ユーザ事例 & スペシャルレポート

専門学校九州デザイナー学院 インテリアデザイン学科では、入学してほとんどの学生がMacもVectorworksも初めて触り、2年間という短いカリキュラムの中で、2次元図面から3次元モデリングを学び、さらに表現力のスキルまでを身につけます。今年は、新しい試みとして2年生がVectorworksの3Dパースで「アナグリフ」にも挑戦しています。今回、インテリアデザイン学科を担当し、「MacでデザインといえばVectorworksです」とおっしゃる柴田和也先生にお話をうかがいました。


-どんな授業でVectorworksを使用していますか?-

CADの基礎と演習の必修授業でVectorworksを使用しています。2次元から3次元、さらに、さまざまな表現手法までを学びます。本校の授業構成は、1年が前期と後期にわかれ、それぞれ前半と後半という構成になっています。1年生の前期前半を1クールと呼び、1クールの期間は7週から8週になります。2年間で8クールの授業構成で、Vectorworksの授業は2クールから始まり8クールまで必修です。

-手描きで製図の授業はあるのですか?-

手描きの図面は1年生の1クールに必修授業で学びます。但し、手描きと言っても簡単な住宅図面のトレースをします。というのも、インテリアデザイン学科では、1年生の後半からインテリアコーディネート、ショップデザイン、家具・雑貨デザインの3つの専攻にそれぞれわかれますので、それまでの短い時間で、基本的な製図について学ばなくてはなりません。ですからトレースによって、まずは線の太さや使い分け、種類などを覚え、大まかな図面の読み方や描き方、図面に用いる記号の意味などを理解させます。1クールでの手描き図面の授業は、いわばVectorworksで図面を描くための導入部と捉えています。

-CADの基礎と演習その授業内容は?-

Vectorworksの授業と手描き製図の授業は2年間通して同じ講師の先生が教えています。2クールからはVectorworksで2次元図面の基礎となる部分を簡単な住宅図面で学びます。その後、課題をブラッシュアップし、3次元に入ります。2次元の作図はどうしても作業的な面も多くなるので、学生は3次元の方が実際のものをイメージしやすく、ウォークスルーができたりと楽しいようです。課題としては、2年生前期の前半までは決まった課題と自由課題の両方で進行しますが、後半からは卒業制作を見据えてVectorworksの授業も行い、教材については講師の先生がオリジナルで用意しています。今年は初めての試みとして、2年生前期の前半で、ひとり一人3Dパースを独自に作製し「アナグリフ」処理に挑戦しました。

-「アナグリフ」処理に授業で取り組んだ経緯は?-

学生達はVectorworksで一通りのことができるようになると、次のステップへ進みたいという欲求が出てきます。何かおもしろいこと、学生達がわくわくするようなことが出来ないかと検討を重ねる中で、Vectorworksの3Dパースを「アナグリフ」によって3D立体視とする案が出てきました。3D立体映像は、今、世の中で非常に注目を集めていますが、インテリア業界では、この手法をプレゼンテーションにあまり取り入れていないこともあり、タイミングとしても取り組むのに良い時期と思いました。また、学生達にとっても就職活動の際、このアナグリフの作品をアピールすることで、話が広がるきっかけにもなるのではないかと考えました。この「アナグリフ」に取り組む経験は、表現し人の心に訴える手段のひとつを学ぶというだけでなく、それ以上の何かを学生達が掴めるのではないかと考え、学内での調整の結果、ゴーサインをいただき、実現することができました。

-「アナグリフ」に挑戦された生徒さんの反応はどうでしたか?-

学生達は作図しながら画面をずっと見ているので、出来上がった時に特別なリアクションはありませんでした。とはいえ、最終的に3Dめがねを通してパネルになった作品をみて、物や人が飛び出して見えたり、空間的な奥行きなどがよりリアルに見える作品には、「おーっ、すごい!」と言うし、そうでもない作品には皆の反応も薄かったのは確かです。それぞれの反応をみて、あるいは自分の作品をみてどうであったのか明確にわかりますので、その点は通常の課題制作の講評会とはちょっと違っていたと思います。もちろん、作ってみないと善し悪しもわからないのですが、やはり、「アナグリフ」に限らず表現手法については経験してみることが一番大切だと考えています。

ですので、あえて展示用の作品をA1サイズまで引き延ばしました。パソコンの画面でしか作品を見ていない学生達にとって想定外であったとは思いますが、それも作品が大きくなるとどう見えるか、というひとつの経験と考えています。

-「アナグリフ」はVectorworksとステレオフォトメーカーの連係ですが、他のソフトとの連係はありますか?-

Adobeイラストレーターとフォトショップはデジタルワークという名称の必修授業があります。1クールはイラストレーターを、2クールではフォトショップの基本操作を習得します。3クールからはイラストレーターにVectorworksの図面を取り込むようなことにも取り組んで行きます。やはり、それぞれのソフトについて基本操作がわからない状態では混乱が起こるので、ある程度基礎が固まった段階で連係した授業となります。卒業制作はプレゼンテーションボードや模型を作りますので、プレゼンテーションボード作製のためにVectorworksの授業でプランを作って、それを平面構成のデジタルの授業でレイアウトを行うというような形で、連係して学んで行きます。3次元については使用しているソフトはVectorworksだけで、これらのソフトを使って表現手法を学んで行きます。

-デザイン教育の中でのCAD教育の位置づけは?-

社会に出てインテリアやデザインの仕事に携わるにあたって、今の時代は、パソコンで図面を描けることがどこの企業でも欠かせない技術のひとつになっていると感じます。そして、その対策ができるようなカリキュラムを組んでいます。パソコンで図面を描けるスキルは身につけようということです。ただ、学生にどんなに大事だと伝えても難しい面はあります。ですからVectorworksの操作や機能をすべて覚えさせるというよりは、自分が図面を描きたい時に描ければよいだろうと考え、一通りの基礎的な機能や操作の経験と、より多くの表現手法を経験させるということです。デザインすることは表現することでもあり、その表現手法や手段はCADに限らず色々あります。本当に必要になった時にCADで図面が描ければよいと考えていますし、どう使うかはひとり一人が授業での体験をもとに考えてくれたらよいと思っています。

-今後どのような授業を行いたいですか?-

具体的にはありませんが、本校の教員は皆そうですが、学生が飽きてしまわない授業を行いたいと考えています。授業は、本質さえ押さえればあとは学生達を「自由な発想でいかに楽しませるか」ではないかと思います。我々が必要だとわかっていても学生達ひとり一人が必要に迫られないとわからないことも多いのです。ですから、それをどう必要だと思わせるか、学生のモチベーションがあがり、楽しい授業の中でその必要性も同時に伝えるということを今後も考えていきたいと思います。今年Vectorworksで「アナグリフ」に挑戦したように、時代にあわせ、どんどん新しいことを取り入れて挑戦したいと考えています。

【取材協力】

学校法人 九州安達学園 専門学校九州デザイナー学院 http://www.eggnet.ac.jp/

インテリアデザイン学科 担当    柴田 和也 氏
インテリアデザイン学科 非常勤講師 藤武 孝 氏

(取材:2010年9月)

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