ユーザ事例 & スペシャルレポート

2009年6月 新潟県柏崎市にある「新潟工科大学」のオープンキャンパスを訪問しました。
就職率が90%を超す、全国でも屈指の大学で行われるオープンキャンパスには、県内の工業高校からバスをチャータして訪れるほど盛況で、6月、7月、9月の年3回行われています。中でも90分の授業時間内にVectorworksを使用して家を創ってしまう建築学科は、一度に40~50名が参加する人気のコース。明日の建築家を目指す高校生と一緒に体験入学してみましたのでレポートします。


-オープンキャンパス授業開始!-

飯野先生のかけ声で授業開始。在校生が本日のサポーター。Vectorworksを熟知しているだけに参加の高校生達にとっても頼もしい存在です。まずは、建築学科を紹介。スケッチから絵心上達、模型制作など造形的に建築デザインの基礎を学びます。その後、チームを編成してさまざまな課題についてコンペに取り組み、実践的な設計作業を身につけてゆきます。もちろん、CADの授業も多様。高校生達にとっては、こころ弾む内容です。

-実践:Vectorworksで家を創ろう。-

紹介も終わり、いよいよ実践開始。今まで使ったことも無いCADソフトを使って90分で家を創ります。参加の高校生達も半信半疑。パソコンに向かって作図を開始します。まずは建築の基礎知識である、縮尺、単位等、建築に必要な項目を説明とともに操作しながら設定。高校生達は、不慣れながらも、一生懸命、操作についてゆきます。スナップグリッドを455mm、レファレンスグリッドを910mmに設定。2マスで畳1枚。設計に携わる方に取っては当たり前のことでも、高校生達にはチンプンカンプン。じわりじわり建築の概論を伝えます。設定が完了。さあ、これから家を創ります。

-壁を描いたら立体に?-

壁ツールで壁を生成し、長方形の躯体を完成させます。このくらいは、いつもインターネットやメールなどを利用している高校生達にとっては、お手の物。次に、作図した壁をフライオーバーツールで回転させると立体の3D図形に早変わり。ぐるぐる回して、興味津々。教室の雰囲気は一転し、高校生達に笑みがこぼれます。初めての3Dにニコニコしながら操作しています。

-建具の挿入。それも3D-

続いて、窓、ドアの挿入。予め用意されているシンボルを壁に沿ってクリックし、好きなところに配置します。操作について質問があると、手を挙げて、在校生よりレクチャーを受けます。時間のある学生は、テーブルセット等を配置。簡単な平面図が完成しました。壁に色をつけ、ここでフライオーバーツールを利用して3Dで確認。全てが3次元表現となり、いろいろな角度に視点を変えてさらに確認。もうコツを覚えて、簡単に操作しています。

-屋根を作成。そして、レンダリングして3DCGに挑戦!-

つづいて新規にレイヤを作成して屋根をかけます。屋根コマンドを選択して、先生の指示の通りに軒の出などを設定。「OK」すると屋根がかかりました。3次元で確認すると家の完成です!しかし、このままでは壁等がのっぺりとしたまま。ツールセットのライトのアイコンから、光源ツールで光源を配置し、Renderworksを使用してレンダリングを実行。すると家にメリハリができ、奇麗な仕上がりに。最後に庭園、縁石の作図、車等を配置してエクステリアが完成。思い思いの家が完成し、隣の子が創った家と見比べて、自分の創った家に大満足。教室全体が一体感に包まれました。あっという間の90分。丁度時間となりました。

飯野先生にお話を伺いました。

-なぜVectorworksなのですか?-

学生時代にVectorworksと出会いました。他のCADソフトも触ってみたのですが、一番手に馴染んだのがVectorworksでした。とても簡単に2次元、3次元、しかもレンダリングまでできる。CADの中でもデザインができるCADは、Vectorworksだと思っています。学生たちも最初は授業で教えていることだけで設計しますが、そのうちに、私も知らない機能で自由にデザインを始めているところを見ると、道具として馴染み易いのではないでしょうか。

-CADの授業のポイントは何ですか?-

どんなにホームページやメールができる学生でもCADには抵抗があります。その抵抗を払拭させることが重要です。どんどんさわってもらい操作の簡単さを知ってもらいます。どんな絵でもかまいません。慣れること、親しみが湧くほど作業時間を費やすことで習熟度もアップします。

-「家をつくろう」の教材は先生がお作りになったそうですね-

短時間で、家が創れたら楽しいだろうなと考え、この教材を作成しました。平面だけでなく立体になることでイメージも湧き易い。この教材では、基礎も柱もありませんので構造的に成り立ちませんが、まずは、CADを使って建築的に何かを創る楽しさを学んでもらえば良いと思っています。家を完成させた時にデザインすることの楽しさを実感し、設計したいなと思ってもらうことが重要です。入学してから建築を学ぶことで、構造や建築にとって必要な条件は自然と身に付くので、問題ないと思っています。

-学食のリニューアルは建築学科の作品とのことですが-

学食を改築することとなり、Vectorworksを使って学内コンペを実施しました。グループごとに作品を発表して最優秀作品が本採用となりました。外部との折衝など、改築するまでにはいろいろな苦労はありましたが、自分たちの作品が本物になり、しかも母校に残る。彼らは、もう卒業しましたが、非常に喜んでいます。

-これからの取り組みは?-

Vectorworksの簡単操作については、お話しましたが、この教材に限らずさまざまな教材のバリエーションも検討しています。もっとたくさんの機能を教えることで、デザイン教育に役立てたいと考えています。また、私は環境に関する研究を行っているのですが、Vectorworksは「サーモレンダー」を利用して、環境をデザインできることも強みです。環境に配慮した、デザイン教育を推進してゆきたいと思っています。

【取材協力】

新潟工科大学 http://www.niit.ac.jp/

教授 博士(工学) 工学部 建築学科 担当 飯野 秋成 氏

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