ユーザ事例 & スペシャルレポート

環境と建築をテーマにした「環境建築ソリューションセミナー」

連日厳しい暑さが続いています。
東京をはじめ、全国各都市では真夏日の連続日数を更新するとともに、突発的な集中豪雨や雷雨、それらによる大きな被害が報告され、新聞や各メディアでも、都市化やヒートアイランド現象の影響?!などと、大きく取り上げられています。このような状況の中、A&Aは7月30日(水)大手町サンケイプラザにて「A&A環境建築ソリューションセミナー」を開催しました。

今回、日経BP社 家入氏と日建設計総合研究所 山村氏を招いての特別講演を行いました。
家入氏は、昨今のBIMを取り巻く状況、そしてこれからの展望を米国での現状を交えながら解説しました。また、山村氏は、温暖化時代となった現代に求められる環境プロポーザルをこれまでの施工例をもとに語りました。当日の参加者は100名以上にのぼり、BIMと環境という、いま重要な話題に耳を傾けていました。


「BIMで環境建築の設計プロセスはどう変わるか?」

日経BP社 家入 龍太 氏

日経BP社 家入氏は、「BIMで環境建築の設計プロセスはどう変わるか?」と題し、地球温暖化と建築との関係、それを解決する手段としてのBIM、そしてBIMと建設業界との方向などについて語りました。

「BIMとは、Building Information Modelingの略で、実体は設計段階で作成される3次元CADデータに対し、様々な情報(データベース)を付加したものを指します。従来の3次元のCGやパースが電子ハリボテとするならば、BIMは魂の入った3次元モデルと言えるでしょう。」

「このBIMを利用することによって、設計、施工、メンテナンスといった建物のライフサイクルに関わる業務おいて、ひとつのデータに対する相互運用性を高めることができます。」と説明し、地球温暖化と建築家という面でも、CO2の排出量は自動車よりも、実は建物から排出されるCO2が多く、さらに増え続けている。これからの地球環境を考えれば、建築家の果たす役割というのは非常に重要となってくることを語りました。

また、VectorWorksについても、
「VectorWorksは、BIMという概念が浸透していない15年以上も前から、CADデータに情報を付加する機能をもっており、主要なBIMソフトの一角であると言えます。」と評価しました。

続いて、米国での現状として「既に米国ではBIMを使うのは当たり前、今はどう活用するかという点がテーマとなっている。その代表としてBIMよる温暖化対策(環境)に注目があつまっており、事例も非常に多い。この流れは、日本にも近い時期に訪れでしょう」と、いくつかの事例を交えながら説明する中、米国でのVectorWorksによる環境BIMとしての活用も紹介し、デザインCADだけでないVectorWorksの可能性、そしてBIMソフトの向かうべき方向についても語りました。

「温暖化時代に求められる環境プロポーザル」

株式会社 日建設計総合研究所 山村 真司 氏

「都市の温暖化」と「地球の温暖化」。建築業界は、この2つの問題に直面しているのではないでしょうか?
山村氏は、環境設計を通じて、ヒューマンレベルでの快適性の向上と、計画地が周囲に及ぼす熱的影響の低減という、2つの課題をクリアしています。

さらにこれらの効果を客観的に検証するため、サーモレンダーを始めとしたシミュレーションツールを活用し自社内だけではなく、クライアントに対しても説明をしています。
事例として取り上げた街区では、周辺緑地との繋がりを意識して、歩道や公開空地の緑化を推進し、気温の低下を図っています。

「高木や生垣などで囲まれた空間は、木漏れ日やそよ風などで心地よいものとなり、そこで昼食をとる人もいるなど、ひとの居場所として機能している」と語りました。

環境設計という面では「サーモレンダー」に加えて気流解析ツールを使っているとのことです。
風の流れを考慮するだけでなく、熱の放射環境までを含めた総合的な解析を行っているとのことで、実際に施工したいくつもの大型プロジェクト事例の資料やデータなども合わせて、解説しました。

山村氏は、「環境に配慮した設計を行うには、定性的な判断だけではなく、シミュレーションツールを用いた定量的な検証、説明が必要である。」と力強く語りました。

「サーモレンダー3Pro」

エーアンドエー株式会社 環境デザイン事業推進室

サーモレンダーは、東京工業大学梅干野研究室が長年に渡り研究してきた、屋外熱環境シミュレーションプログラムを汎用CAD-VectorWorks上で稼動させたものです。

2006年に試験販売を開始し、ユーザーや導入検討者からのヒアリングを重ね、ユーザーインターフェース、仕様、機能をブラッシュアップし、都市と建築の熱環境設計ツール「サーモレンダー3 Pro」として、今年の6月にリリースしました。

研究開発部 浅輪からは「サーモレンダー」の学術的な側面と、屋外熱環境の概要、「サーモレンダー3 Pro」で新たに追加された機能(建物熱負荷計算、建物使用エネルギー計算、人工排熱計算等)を解説し、さらに屋外空間での表面温度を積極的にコントロールすることの重要性についても説明しました。

環境デザイン事業推進室 竹口 環境デザイン事業推進室 竹口からは、操作を中心とした製品の特徴を説明しました。

「VectorWorksをプラットフォームとしたことで、作図からモデリング、熱収支計算までをシームレスに、かつ少ないステップでおこなうことができます。」

「さらに、従前の熱負荷計算ソフトやシミュレーションツールでは表現することが難しかった多彩なプレゼンテーションを可能にしています」と語り、実際に少ないステップで8階建てのオフィスビルをシミュレーションする様をデモで説明し、計算結果も数クリックで表示できることをアピールしました。

「サーモレンダー3 Pro」は、屋内と屋外を連成解析した画期的でチャレンジングなシミュレーションツールであり、BIMとして先を見据えた実務にも対応した「VectorWorks」と共に、新しい建築と地球環境に寄与できるソフトウエアと言えるでしょう。

(2008年7月)

 

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