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[製品仕様・技術情報]

レンダリング速度に関するトラブルシューティング(2015年12月21日掲載)

本項では、VectorworksおよびRenderworksに搭載されているレンダリング機能に関して、レンダリング処理速度が低下する場合の回避方法や、レンダリング処理速度の向上に関するヒントなどについて解説いたします。

 

本稿に含まれるトピックス:

 

 

▼RWレンダリング

Renderworksレンダリングでは、バージョン2011からMAXON社のCineRender/Cinema4Dレンダリングエンジンを導入しています。(バージョン2010以前ではLightworksレンダリングエンジンが採用されていました。)
RWレンダリングの処理速度が低下する主な原因とその対策として、以下のような点が挙げられます。

 

1)旧バージョンのVectorworksで作成されたファイルを使用している場合

 - ツールメニュー > 不要情報消去コマンドを実行し、ファイル内の余計な情報を削除してください。
 - ツールメニュー > ユーティリティ > 旧部材を更新コマンドを実行してください。
 - ツールメニュー > ユーティリティ > 旧パラメータを更新コマンドを実行してください。
上記のコマンドを実施してからファイルを保存し、Vectorworksを再起動することで、処理速度に改善が見られるかどうかをご確認ください。

 

2)デザインレイヤ上でレンダリングを行う場合

Cinema4Dエンジンのデフォルト設定では、旧バージョンでのLightWorksエンジンよりもかなり高い解像度(DPI)で、デザインレイヤ上のレンダリングが行われているようです。このため、編集のたびにデザインレイヤ全体をレンダリングして確認するのは効率的でない場合があります。
この解決策として、必要な描画領域のみをビューポートとしてトリミングし、シートレイヤ上に配置して確認する方法があります。
レンダリング速度確認用のビューポートを配置するシートレイヤの解像度(DPI)は150程度がよいでしょう。ビューポートのレンダリングはバックグラウンドで行われるため、ビューポートの更新中も別の作業が可能です。デザインレイヤ全体をレンダリングするより、効率的にレンダリング結果を参照することができます。
ビューポートの作成方法につきましては、こちらのチュートリアルビデオ(英語)をご参考ください。

 

3)OSやハードウエア等のマシン環境による影響

 - ご利用環境のグラフィックスドライバが最新であることをご確認ください。グラフィックスドライバの確認方法などにつきましてはこちらをご参照ください。
 - ご利用環境のOSアップデートがすべて適用されているかをご確認ください。

 

4)Vectorworksの環境設定について

 -【Win】ツールメニュー > オプション > 環境設定 > 画面タブを開き、GDI+を使用オプションを現在の設定と変更することで改善が見られるかどうかをご確認ください。
 - 【Mac(v2014以下)】ツールメニュー > オプション > 環境設定 > 画面タブを開き、Quartzを使用オプションを現在の設定と変更することで改善が見られるかどうかをご確認ください。(v2015以降ではQuartzを使用オプションはございません)
 - ツールメニュー > オプション > 環境設定 > 3Dタブを開き、回転体の分割数の設定を下げることで改善が見られるかどうかをご確認ください。

 

5)レンダリングモードとカスタム設定

インストール直後の初期設定状態でのレンダリングを比較した場合、Cinema4Dエンジンを搭載しているバージョンでは、旧バージョンでのLightWorksエンジンよりも高品位な設定となっており、それに応じた結果が得られます。
RW仕上げレンダリングは高品位なレンダリング結果が得られますが、RWカスタムレンダリングを利用して不必要な設定を下げることで、品質を落とさずにレンダリング速度を改善できる場合があります。また、より高い設定にすることで更に高品位な結果を得ることもできます。
RW仕上げレンダリングが長時間かかる場合や、RW仕上げレンダリングの結果が物足りない場合などは、RWカスタム設定で様々なレンダリング設定を試みることをお勧めします。
RWカスタム設定では、「かすれ度合い」と「最大反射」の設定によって劇的にレンダリング時間が増加する傾向があります。屋内仕上げレンダリングの場合を除き、これらの項目は低品位もしくは1に抑えることで処理時間の短縮に繋がります。
RWカスタム設定の各項目に関する詳しい情報については、下記内容をご参照ください。

 

  • 品質設定全般について
    RWカスタムレンダリングは、レンダリングのあらゆる側面を完全にコントロールすることができるため、このレンダリングモードを使用することは多くの場合ベストな選択だといえます。場合によっては、より複雑なジオメトリと光源の計算を加えることによって、RW仕上げレンダリングよりも良いレンダリング結果を得られることがあります。 図面の最終仕上げに入る前にレンダリングのテストを複数回行う場合は、品質設定を可能な限り低く設定しておくほうがいいでしょう。
    RWカスタム設定には複数の品質設定項目があり、それぞれで低品位から最高品位まで設定できます。項目によっては高品位と最高品位で視覚的な違いがほとんどない場合がありますが(曲線形状オプションは除く:曲線形状は最高品位に設定することで結果が大きく異なります。)、低品位以上を設定することで処理時間は倍増することもあります。 このため、最終的なレンダリング結果が必要な場合を除き、通常はこれらの品質設定項目は可能な限り低い状態にしておくのが有効です。
  •  

  • 間接光
    間接光は視覚効果として非常に有効で、レンダリングにリアルさをもたらしますが、レンダリング処理時間は簡単に2倍、3倍に増加します。最終的なレンダリング結果が必要な場合を除き、通常は可能な限り低い設定にしておくのが有効です。
    間接光は、背景放射光の設定で間接光が有効な場合に、その品質を設定するものです。このため元となる背景放射光の間接光をなしにしたり、バウンス回数を減らすことでも効果があります。
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  • かすれ度合い
    この設定は、かすれ度合いが設定されているテクスチャのぼやけ具合に影響します。これは特定の種類のガラステクスチャにおいて、不透明具合を表現するためにしばしば使用されます。
    このオプションはレンダリング速度を著しく低下させることがあるため、これに近い効果が得られるテクスチャ設定の透明属性で不透明度を上げるほうが望ましい場合があります。
  •  

  • 最大反射
    この設定は、2つの光沢する面の間で光が反射される回数を制御します。
    もし、レンダリング対象が単一のオブジェクトであるか、反射/透過属性を持ったテクスチャが含まれていない場合は、このオプションは効果がありません。建物の壁面反射や窓、車体の光沢やウィンドウなど、複数の反射/透過面を持った表現を行う際に必要になります。
    この数値を1にすると、反射/透過面で1回の反射/透過処理を行います。多くの鏡面やガラス面が重なるような状態で、それらをリアルに表現したい場合は、数値を上げる必要が出てくるでしょう。
    この数値を増やせば増やすだけ、レンダリング処理時間が増大します。通常は低い値にしておき、最終的なレンダリング結果が必要な場合に上げるのがよいでしょう。一般的には3程度が妥当な数値です。

 

 

▼OpenGLレンダリング

OpenGLレンダリング設定では、以下の点にご留意ください。

 

  • アンチエイリアス
    オブジェクトのエッジを滑らかに表現するためのオプションです。
    このオプションはグラフィックス性能に直接依存するため、オンボードグラフィックスまたは低速なグラフィックスボードを使用している場合、OpenGLレンダリングが著しく遅くなることがあります。
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  • 輪郭線を実線で表示
    オブジェクトのエッジに輪郭線を表示するためのオプションです。
    アンチエイリアスと同様に、このオプションはグラフィックス性能に直接依存します。
    これを軽減するには、より高性能のマシンを使用したり、ビューポートを利用してシートレイヤ上でバックグラウンドレンダリングをOpenGLに、レンダリング(輪郭)をVW陰線レンダリングにする設定を使用したほうが早い場合があります。
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  • 影を付ける
    このオプションは、場合によっては3倍以上のレンダリング処理時間がかかることがあります。
    レンダリングに影表現を必要とする場合は、RW簡易レンダリングなどRenderworksによるレンダリングをご検討ください。

 

 

▼VW-陰線レンダリング

MacOSX上でVW隠線レンダリングを行う場合、CPUのシングルコアのみを利用します。8コアのiMacを使用しても、シングルコアの古いiMacを使用しても、理論上はレンダリング速度は同一です。これは今後のバージョンで改善予定です。
なお、Windows上ではマルチコアによるVW陰線レンダリングが可能です。
その他、VW-陰線レンダリング設定では以下の点にご留意ください。

 

  • 曲面の分割線を表示する最小角度
    図形曲面の分割線を見せないようにすることができるオプションです。隣り合った面同士の結合角度の大きさで数値を指定します。
    初期値は0となっており、これは全ての分割線が縁取りされます。数値を上げることで表示される分割線が少なくなり、レンダリング処理速度も向上します。
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  • 交差線を生成
    このオプションは、交差している図形の間に線を引きます。
    該当箇所が多数存在するファイルではレンダリングが遅くなるため、この表現が必ずしも必要でない場合は、オプションを無効にすることでレンダリング処理速度が向上します。

 

 

▼ファイルサイズを小さくし、3D図形の表示速度を改善するために

以下のチュートリアルビデオ(英語)では、どのようにして3Dオブジェクトを汎用ソリッド図形に変換し、回転体の分割数を小さくすることで、複雑な図形処理を単純化させるかという方法について説明しています。
これらの手法は、レンダリング処理速度の向上にも貢献するでしょう。