|
|
|
|
基調講演:「これからの建築を考える」
建築家:伊東 豊雄 氏 |
|
|
基調講演には、日本を代表する建築家の一人、伊東豊雄氏が登壇。超満員の中、講演ははじまりました。
「わたくしは事務所をはじめてから40年になり、" 節目の年だなあ "と考えていた矢先に、大震災が起こりました。わたくしの建築人生を一変させる大きな事件でした。」と切り出し、「こういう時だからこそ、建築の思想を変えなければいけないのではないかと考えています。」と講演のテーマについて説明しました。
|
|
建築家 伊東 豊雄 氏 |
|
まず、7月30日に愛媛県今治市にオープンしたばかりの「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」について、何枚もの写真をまじえながら、珍しいフレーム構造や、コンピュータを使った複雑な菱形ユニットを組み合わせた屋根など、瀬戸内海を望む高台に建つ3つの近代的な建築それぞれの興味深い設計や工法について、詳しく解説しました。そして「もともと、この隣にある美術館の分館設計の依頼があり、いろいろな打合せをしていく中で、" ご自身のミュージアムにしませんか? "というお話をいただきました。戸惑いもありましたが、お受けさせていただくこととなりました。」と、自身のミュージアム建築に至った経緯を披露しました。
次に、東日本大震災からの復興へ向けて、建築家ができることを考えるため結成された「帰心の会」( 山本理顕、内藤廣、隈研吾、妹島和世、伊東豊雄 : 敬称略 )の被災地での活動の一つとしてはじまったプロジェクト「みんなの家」( 仙台市 )について解説。
「みんなの家」は、現在、プレハブの仮説住宅が並ぶエリアに、10坪と小さいながらも、ここに暮らす地元の人々が何気なく集まり、団らんが取れ、心癒せる場を建設しようとはじまったプロジェクトです。
地震発生前まで庇や縁側のあった住居から、四角いプレハブへと移り住まなくてはいけなくなった高齢者や住民の皆さんのことを考え、「今回は、現代建築によくあるモダンな住宅ではなく、住民の皆さんと直接話し合いながら、0から考え直してみようと思いました。」と、本当に地元の方達の必要とする「みんなの家」の基本構想を紹介しました。
「住民の皆さんの共通イメージというものが浮かんできます。それとわたしたちが考える住宅というものに、大きなギャップが生まれてくる。この問題について、建築家の表現はどのような意味を持つのかを、もう一度考えてみる。仮設に住む人達に必要な住宅とはどういうものか思案し、ギャップを埋めていく作業は非常に面白いのではないかと思います。」と何度も現地に足を運び、地元住民の皆さんと密接にミーティングを重ねながら地域に溶け込むこれからの建築を考える想いを伝えました。
さらに「こういうことをこれから若い人達と一緒にやっていきたい。そして『みんなの家』をもっと沢山つくってみたいと思っています。」と、震災復興に対する想いと建築設計の原点とも言える考えを語りました。
この他、2009年に台湾の高雄に建設された4万人収容のスタジアム( ワールドゲームズスタジアム )については、公園と一体となったデザイン、日射しを遮る役割を果たすソーラーパネル屋根、競技場内に風の流れを引き込む構造などを解説し、SimTreadの原型となったプログラムを利用して竹中工務店と弊社開発室木村が共同で避難シミュレーションを行った事例を紹介。
「今までスタジアムというのは、閉ざされた環境、完結した空間をつくることで、より人工的な優れた環境をつくることが考えられてきましたが、特にこの震災を機に、これからは自然環境に対して開いた建築、開いた環境づくりが要求されてくるのではないかと思っています。」と、これからの建築への想いを述べました。
さらには、アーチの壁を多様した多摩美術大学図書館や、アルゴリズミックデザインを利用した台湾の大学校舎、国際貿易センター前広場など、沢山の作品をデザイン手法と合わせて紹介。また、現在進行中の国内大型メディアテークプロジェクトについては、建物だけでなく、緑をふんだんに使ったエリアゾーニングや、天井から自然光が降り注ぎ、建物内を風が通る構造など、快適な環境づくりを細かに解説しました。
最後に、海外で2013年末に完成予定のオペラハウスプロジェクトについても触れました。
伊東氏は、これからの建築について「津波で流された部分にも、また植物が生えてきます。それと同じように、家を流されてしまった人達もここに住むんだと言う人ばかりです。」、「やっぱり人間は自然の部分である。現代建築がそれをいかに取り込んで形にすることができるか、この震災を機に、現代建築を超えたところで新しい建築を考えていくことができるかが問われていると思います。」と締めくくり大きな拍手と共に講演を終了しました。 |
|
|
|
|